第11話 新たな仲間

「———きゅっ、きゅっ!!」

「お、何だ何だ……おおおおおおおお可愛い!!」


 結果だけ言うと———めちゃくちゃ懐かれた。


 その証拠に、檻から出した後、少しの間俺の周りを飛び回って頻りに匂いを嗅いでいたのだが……何かの確認を追えたのか、俺の肩に降りてスリスリと少しザラザラする頬を俺の頬に擦り付けてきた。

 更にそれだけでなく……俺の頭の上に乗ったり、俺の掌に乗って指をペロペロ舐めたりしてくれた。


 てかドラゴンのよだれって全く匂いしないんだな。

 強いて言えばちょっと焦げ臭いくらいだが……炭とかより断然臭くない。

 普段からしょっちゅう炎吐くから匂いの元となる菌が死滅するのだろうか……まぁ細かいことは良いや。


「きゅっ、きゅーっ」

「おっ、こらこら炎は吐かないで。俺に当たったら燃えるから。ほら、その代わりにこれあげる」

「??」


 俺は自分で作ったおにぎりを子ドラゴンに近付ける。

 子ドラゴンはしばし俺の顔を眺めた後……クンクン匂いを嗅いで元気良く食べ始めた。

 ふふ、その姿すらも愛おしい。


「……お前の母ちゃんは何処にいるんだ〜?」

「きゅう?」


 ドラゴンは人間なんかよりよっぽど頭が良いから俺の言葉なんかとっくに理解しているはずなのだが……よく分からないとばかりにコテンと可愛らしく首を傾げた。

 同時に物凄く嫌な予感がしてきた。


 この子……もしかしてドラゴンの巣から盗んだ卵が孵化でもしたのか……?

 あのドラゴンが母親を覚えていないわけないし……。


 俺が子ドラゴンの喉を人差し指で撫でながら考えていると……扉が開いた。

 そして———運転手らしき男とバッチリ目が合った。


 ……


 …………


 ………………


 ……………………。




 「…………こ、こんにちは……?」

「これは一体どういうことなんだよ———ッッ!!」



 

 男の悲痛過ぎる叫びが辺りにこだました。








「……な、何かこの運転手が可哀想になって来たな……」


 俺は、目の前で子ドラゴンにボコボコにされて全身腫れまくって気絶した男を眺めながら呟く。

 そんな男の上には満足げな子ドラゴンが座っている。


 正直、掌に乗るサイズの超絶可愛い子ドラゴンが、数十倍もある男を尻尾だけでボコボコにする光景はクソ怖かった。

 普通にホラーだった。


 いや、この人可哀想すぎるだろ……。

 ただでさえ運転がムズいブラックホースを頑張って操って運転したのに、標的を相棒がミスって連れ去ってしまうだけでも可哀想なのに……自分は失意の中運転し、やっとこさ着いて扉を開けたら———相棒が俺に負けて白目を剥き、自分が子ドラゴンに飛び掛かられてフルボッコにされるとかさ。

 まぁ全部自業自得何だろうけどさ……この無能な相棒役の男が悪いのにそのツケを払わされるのは普通に可哀想。


「ま、まぁ取り敢えず降りるか……」


 俺は男を踏まないように馬車を降りる。

 いざ降りると……物凄い光量の太陽が俺の目を普通に強襲してきた。


「あああああああ目がああああああああああ!?!?」


 俺は思わず叫びを上げながら下を向いて目を押さえた。

 

 め、目が焼けるぅぅぅぅ……。

 む、ム◯カ大佐の気持ちが初めて分かったかもしんない……。


「うぉぉぉぉぉ……」

「きゅう……?」

「ぉぉぉぉぉぉ……痛くない」


 突然目の痛みが消えた。

 試しに目を開けてみるが……。



「……眩しくない」



 さっきのは何だったのかと鼻で笑いたくなるほど何とも無い。

 俺はそうなった原因でありそうな子ドラゴンを見る。

 子ドラゴンは俺の足首にキュッと掴まって俺を見上げていた。



 ———ズキュゥゥゥン!!


 

 俺の胸が可愛さという凶器にぶっ刺された。


「……ありがとう、子ドラゴン」

「きゅう……」

「ん? どうし……あ、もしかして名前をつけて欲しいのか?」

「きゅっ!」


 いきなり元気が無くなったかと思えば、ただ名前が欲しいだけだったらしい。


 まぁ俺も子ドラゴン子ドラゴン言ってるし……生まれたばっかりなのか名前もないんだろうな。

 よし、俺が超絶カッコ可愛い名前を付けてやるかんな。


「うーん…………あ、ムートはどうよ?」


 やっぱりドラゴンと言えばバハムートだろ?

 ただバハムートだとカッコいいだけだし……いっそのことバハ抜いたら多少は可愛くなるんじゃね?


 そんな結構ノリ的な感じで言ってみたのだが……。



「きゅっ! きゅう、きゅう!!」



 ……何かめっちゃ気に入ったらしい。

 何か嬉しそうに舞ってるし……まぁ本人が喜んでくれたなら良かったよ。


 俺は喜ぶムートの姿を見ながらぼんやりとそんなことを思うと同時に、やっと周りに視線を巡らせた。

 辺りは木々に囲まれており……近くに建造物らしきモノは全くない。

 正直何でここで止まったのかがさっぱり分からなかった。


「間違えた……なんてことは無さそうだし……無いよな?」


 普通にここに取り残されたら詰むんだが?


 何て実は結構詰んでるんじゃ……と危惧していた俺の袖をムートが引っ張ってきた。


「どうしたんだ?」

「きゅっ、きゅう!」


 頻りに何かを訴えるように鳴く。

 俺は何事かと引っ張られるがままに付いてい『カチッ』———……ん?


 何か物凄く嫌な音が下から聞こえ、嫌々ながらそっと下を向くと……俺が踏み込んだ地面が四角形に沈み込んでいた。

 それはもう、罠みたいだった。

 



「———あ、やべっ」




 そう呟いた瞬間———俺達は光に包まれた。

 

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万年C級の転生者、逃亡中の他国の王女に出会ってしまう あおぞら @Aozora-31

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