万年C級の転生者、逃亡中の他国の王女に出会ってしまう

あおぞら@書籍9月3日発売

第1話 何の才能もチートもない転生者

 ———転生者。


 ラノベなどで良くある地球人が死亡して神やら色々な事が原因で異世界に転生した者のことを言うと、俺の中では認識している。


 彼らは、チート貰って楽に異世界を無双したり。

 強い人々に鍛えられて、無自覚に無双して『あれ? 俺、何かやっちゃいました?』とか言ってみたり。

 前世の自分を変えようと奮闘したり。

 自身が転生したキャラの死亡フラグを回避するために必死に努力したり。

 チートを持ってなくても努力で強者に成り上がったり。

 

 まぁ転生者の大体がなんやかんやで超絶強くなり、俺Tueee &ハーレムか奴隷の可愛い女の子を手に入れたりするのが殆どだろう。


 正直俺———ネイトも、を望んでいた。

 物凄く望んでいた。


 しかし、俺の転生はと言うと……。


「お、また来たな坊主! 今日も相変わらずオークを狩ったのか。流石『オーク虐殺装置』だな!」

「何だよ、その物騒でダサいあだ名は! アンク、それ言い始めた奴教えてくれ。ボコボコにしてやるから」

「ナード」

「……こ、『今回だけは見逃してやるから変なあだ名を流すのやめて下さい』って言っておいて」


 現実とは案外……いや、とても無情である。


 因みにナードとは、A級冒険者パーティーのリーダーで、アイツとは仲は良いが、俺が逆立ちしても、天変地異が起こっても敵いっこない。

 しかもそのパーティーは皆美女でナードもイケメンと来た。

 あの美女達にカッコ悪い所を見せたくないので敵対しない。

 決してビビったわけじゃない。

 断じてないからな?


「相変わらず手の平返しが早いなあ」

「う、うるさい! C級冒険者の俺がナードに喧嘩売っても2秒も耐えられんわ! そう言うお前は耐えれんのか!?」

「無理に決まってるだろ。1秒も持たん」

「そのムキムキボディで!?」


 俺は、毎度のことながら冒険者の受付のムキムキゴリラの様な男……アンク(この見た目で弱いって意味不明だよな)に言い訳をしながら、支給品のアイテムポーチからオーク5匹の死体を取り出す。

 今日朝から夕方まで死ぬ気で狩りをして倒した戦果である。


 そんな俺の努力は———。


「はい、銀貨15枚と銅貨5枚な」


 日本円で言う1550円程度の価値しかなかった様だ。

 日本より物価が安いとは言え、家賃が金貨1枚(10000円)なのを考えるとまだまだ足りない。

 更に、食費やら何やらも足せばもっと足りない。

 と言うか……。


「……こんだけか? 前より少ないじゃないか」

「まぁ最近はオークの納品が増えてるからなあ……安くなるのも当たり前だ」

「……そうか……」


 俺は意気消沈としてトボトボ銀貨と銅貨を袋に詰めて冒険者ギルドを出る。


 話はズレたが、俺の主観では転生者は貴族生まれの人が多い気がする。

 まぁそう言うのは、ご都合主義やら主人公補正と呼ばれる不思議な力が働いているからだろう。


 だが———そんなの全てあくまで創作の中だけだ。

 と言うか、現実にそんな幻想を持ち込むこと自体がナンセンスである。


 あ、そんなことを豪語するだけあって俺は普通の平民だ。

 孤児とか貧困民でないだけマシだが、平民も言うて一部を除いて貧乏である。

 俺の家も普通に貧乏で、家も賃貸なんだが月の支払いすら俺が頑張らないと危うい。


 それなのに転生者ありがちのチートも、規格外の才能も没落貴族とか言う特別な何かも勿論持っていない。

 普通に小さい頃から努力してみたが、まぁ当たり前ながら凡人の域を越えることはできなかった。


 そして当たり前だが美少女&美女のハーレムも形成していない。

 女友達とか同僚の女性とかは居るが……アイツらは何か違うんだよな。

 皆、バカとかポンコツとか脳筋とか強いくせに何故か俺に目を付ける奴など、まともな奴は誰1人として存在しない。


 奴隷なんかそもそも買えるわけがない。

 家賃すら危ういのに最低でも金貨10枚以上もする奴隷を買えるわけないだろ。

 何度も言うが、平民は貧乏なのである。


「ああ、金が欲しぃー一生働かなくて良いくらいの金が欲しいなあー」


 今日の夜にでも、突然俺の下に大金が舞い込んで来たら良いのに。

 一気に1万金貨(1億円)くらい貰えれば、この世界では余裕で一生遊んで暮らせる。


「あぁ……働きたくねぇよ……はぁ……帰るか……」



 これが俺———ただただ前世の記憶を引き継いだだけの転生者の人生である。



 しかし……この日、1つだけ。

 たった1つだけだが創作通りだったことがある。


 それは、俺が家に帰る時に毎日道草を食っているとある森で、いつも通り寝転がっている時だった。

 突然全身に悪寒が走って飛び起きたと同時に———。




「お、王国の方ですか……? た、助けてください……!」




 ———明らかに上流階級と思わしき金髪碧眼の美少女が全身傷だらけで草むらから出てきたのだ。


 俺はこの瞬間———平穏の崩れ去る音が聞こえた。


—————————————————————————

 ここまで読んで下さり、ありがとうございます。


 ゴリゴリギャグの新作です。

 ネイトは強くもないけど激烈に弱いわけでもないです。普通です。

 そんな奴が厄介ごとに巻き込まれたらと言うお話です。


 モチベで執筆スピード変わるので、続きが読みたいと思って下さったら、是非☆☆☆とフォロー宜しくお願いします!     

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