第6話 脱出した先に待っていたのは……。

「「———…………」」


 俺達は命からがら何とか地下牢から脱出すると……お互いに疲れすぎて会話など一切なくただひたすらに無言で街へと帰っていた。

 それどころか一目で分かるほど俺もエリーシャもゲッソリとしていた。


 いや、マジで洒落にならんレベルで疲れたんだけど。

 迷いまくったせいで無駄に走ったし、そもそもアイツ等クソ足速い。

 俺達が全力で走っても徐々に近付かれるのホント怖いのでやめて欲しい。


 そんな時は、俺の地魔法で地面を来る寸前で下げたり、光魔法で目眩ましをしたり、エリーシャのつよつよ炎魔法で道を塞いだりした。


 まぁ行き止まりの時に偶々エリーシャのつよつよ炎魔法を発動したのは普通に絶望したけどな。

 俺が魔力枯渇寸前まで全力の地魔法を発動させて壁をぶち抜かないと普通に窒息死するとこだった。

 マジでアレが1番疲れた原因かもしんない。



 脱出できたのは、正直完全に運である。

 もうこればかりは俺の実力でもエリーシャの実力でもなく、運、としか言えない。

 ひたすらに逃げ回ってたら偶々出口が目の前にあった、それだけである。

 後は、あのめちゃくちゃ強い火だるま君が予想以上に重傷らしくて動けなかったことが幸いした。


 しゃ、洒落になんねぇ……。

 よくこの状況で生きてるな、俺。

 ただ次も生きれるとは限らないので……。



「よし、解散だ。俺はこっち、エリーシャはあっちな。じゃあ達者でな」


 

 原因と離れる、それが1番だ。

 

 俺は自分の行く場所に自身の街を指し、エリーシャは真反対の数十キロ先にある街を指す。

 そして俺は笑顔で手を振ろうと———


「ま、待ってください! 今更私を捨てるんですか!?」

「ひ、人聞きの悪いこと言うな! もう十分付き合ってやったろ!」


 ———したが、エリーシャに案の定引き止められた。


「お願いします! もう少し付き合ってくださいよぉ!」

「ぐっ……」


 こ、コイツ……!!

 

 エリーシャの渾身の上目遣いと強調された推定Dカップの胸部から、俺は抗い難い男としての本能に逆らって目を逸らす。

 忘れてたが、コイツ実は今まで目にしたことないくらいの美人だった。

 

 俺は何か今だとこれ以上されたらコロッと落ちてしまいそうなので、一先ず答えを出すのを諦めた。

 

「……そ、その話は後にしようぜ。今はとにかく寝たい。借金して買った俺の貴族御用達高級ベッドのふかふかに包まれて寝たい」


 そうそう、この世界に転生して1番大変だったのは———ベッドだ。

 正直ご飯は普通にお金を出せば美味しいモノは食える(ギルドの居酒屋は飯も酒もクソ上手い)。

 服なんかもっと気にしない。

 

 でも、ベッド、貴様だけは不合格だ。


 正直あんなカッタイベッドで寝れるわけ無い。

 日本でぬくぬく生きていた俺を舐めるな。


 ということで5年前に借金してまで極上ベッドを買いました。


 その時に親と物凄く揉めたが……まぁ引き下がるわけないよね。

 無事、俺の力説に何とか納得してくれたから良かったけど。



「「———はぁ……」」



 俺達は大きくため息を吐き、トボトボと歩いて帰った。

 










 ———勿論、帰った瞬間ギルドに詰められたのは言うまでもない。


 そして現在進行系で俺とエリーシャはギルド長から個室で職質を受けていた。


「だからギルド長、俺はホントに関係ないんだって!」

「嘘つけ。なら何でお前まで拉致られたんだ? おい、彼女のことを思って黙っているのか知らんが、もう話して楽になっちまえ」

「だから本当に全くの無関係なんだよおおおおおおおおおおおお!!」


 この爺……何度も何度も同じ話ししやがって……認知症入ってるならギルド長辞めちまえクソが。

 てか先ずは『良く無事だったな』とかだろ!

 何で開門一発目が『おい、理由を教えてもらうぞ』なんだよ!

 心は無いのか!?


 俺が話の全く通じないギルド長にイライラして頭をかきむしっていると、エリーシャがおずおずと口を開いた。


「あの……ネイト様は本当に関係ないんです……寧ろ私が巻き込んでしまったって感じで……」

「何!?」

「おい、何で今日一驚いてるのか聞こうじゃないか」


 あまりに失礼過ぎないか?

 まるで俺が毎回問題を起こしているみたいじゃないか。

 寧ろこのギルドの中ではやらかし回数は少ない方だぞ?


「いや、お前が居ない所でお前はやらかしてる」

「なら俺関係なくね!? そんなの誰かが勝手に俺の話題をあげてるだけじゃん!」

「話題に上がるお前が悪い」

「理不尽!!」


 やっぱりそろそろギルド長辞めた方が良いと思います。

 善悪の区別もつかないのは末期だと思います。


「まぁ冗談の半分は置いといて」

「ほっ……流石に冗だ———待って、ギルド長? ギルド長? 半分は本気ってこと?」

「君は冒険者登録はしてないようだが……何者だ?」

「おーいギルド長。駄目だ。耳がイカれてやがる」


 俺を完全に居ないものとして扱うギルド長はエリーシャに鋭い眼光を向ける。

 同時に謎の威圧を纏って強者感を出してきた。


 いや今更シリアスなんてさせねぇよ?


「…………言えません」

「お前も乗るな」

「……そうか。まぁいい」

「いいんかい」


 もう駄目だ、こいつ等は俺一人じゃ捌き切れん。


 俺は諦めて居ないもののようにひたすらに陰に徹することにした。


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 ここまで読んで下さり、ありがとうございます。

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