第5話 チェイス(勿論追われる側)

「———迷いました」

「おい」

「迷いました」

「はっ倒すぞ」

「大事なことなので2回言いました」

「よし、今から俺がお前の頭を粉砕して高性能に作り直してやるからじっとしとけよ」


 俺は清々しく迷ったと言うエリーシャの頭に渾身の握力でアイアンクローをお見舞いしようと取っ組み合いをしながら永遠にも感じる広い洞窟を走る。


 このポンコツ美少女、始めに『この場所は知ってるので任せて下さい』とかほざいてたんだよな。

 結構自信ありげだったから信じてついて来てやったってのに……。


「それがこのザマか。がっっっかりだ」

「ま、待って下さいネイト様っ! 本当にこの場所は知ってるんですっ! 昔地図で見たので分かるんですっ!」

「なら今俺たちはどこに向かってんの?」

「…………」

「これからお前はポンコツ2号な」


 俺の質問に無言でそっと目を逸らすエリーシャ。

 もうコイツの言うことは信じないでおこうと思う。


「はぁ……マァァァジでどうしよっかな。普通に詰んでるっぽいんだが」


 俺は辺りを見渡しながらため息を吐く。

 しかし俺の言葉通り結構詰んでおり、太陽の光の『ひ』の字もない。

 何なら始めの地下牢より深くに来てしまった感が否めない。

 ただ、そのせいかお陰かは知らないが……人の気配も1つない。


「いやぁ……まいったまいった。びっくりするほど分からん」

「ネイト様」

「どうしたポンコツ2号」

「そのポンコツ2号ってやめませんか!? というか1号って誰なんですか!」

「そんなのバーンドに決まっ———」

「あの人と同列は物凄く嫌ですっ!!」

 

 ワガママだなぁ……。


「仕方ない……俺の勘で進むか」

「無視!? さっきの私の話しを聞いていましたか!? あのっ、何か言ってくださいよ!」


 俺はギャーギャー喚き散らすエリーシャ……おっと、ポンコツ2号だったな。

 

 俺は五月蝿いポンコツ2号を無視して嫌な予感が比較的少ない方へと歩みを進めた。



「私があの人と同列なのは流石に納得出来ませんっ!!」


 寝言は寝て言え。











「———流石俺の勘。我ながら完璧過ぎて恐ろしいぜ」

「……ただの勘に負けるなんて屈辱過ぎます……」


 走り始めて十数分。

 何故だか知らないが誰にも会わないまま、俺が完全に勘に頼って道を進んでいった結果……まさかの視線の先に太陽の光を見つけた。

 しかも見えているのは俺だけではなく、エリーシャは俺が勘だけで出口に辿り着いたことに結構ショックを受けていた。


 悪いな、ポンコツ2号のお前とは出来が違うんだ。

 伊達に長年勘で生きてないんでね。


 俺が毎度のことながらお世話になっている勘に感謝していると……何故かエリーシャが訝しげに目を凝らしながら言った。

 

「……本当にアレは出口なんでしょうか?」

「何だぁ? 負け惜しみか? 負け惜しみなんて見苦しい真似はするもんじゃないぞ」

「そ、そんなのじゃありませんっ! ほら、よく見てみて下さいよ!」


 俺は仕方なく……本当に仕方なく、エリーシャが見ろと五月蝿いので仕方なく彼女が指差す先に目を凝らして見てみる。


 ったく……目を凝らしたら何があるってんだよ。

 全く……これだから敗者の言い訳は見苦しいったらありゃしない。

 目を凝らしたってあるのはただの外の光……だ…………。


「…………」

「あら、何か言ったらどうですか、ネイト様?」

「……い、いや、まだ分からんよ?」


 俺は此方は全く動いていないというのに、徐々に近付いてきている気がする光を見て、エリーシャから向けられる視線から逃れるように目を逸らして言う。


 そ、そうだよ……まだ決まったわけじゃない。

 もしかしたらこの洞窟が生きてて距離を変えれるとか、光が近くなっているように見えるのは錯覚だったりとか色々可能性があるじゃん。



 しかし———光が近付いてくるだけでなく、多数の足音まで聞こえ始めた。


 

「…………」

「ポンコツ2号、でしたっけ?」


 やめろ、言うな。


「…………」

「『負け惜しみ何て見苦しい真似はするもんじゃない』……ですか……。誰に言っているんでしょうね?」


 本当にやめてください、お願いします。


「…………」

「『我ながら完璧すぎて恐ろしいぜ』……? すみません、何処が完璧なのか教えてもらってもいいですか?」


 …………グスッ。



「『流石俺のか———」

「———もうやめてぇぇぇええええええええええええ!! 嫌だ、もう聞きたくない!!」



 俺は耳を塞いで叫ぶ。


「何だよ、お前は俺をイジメて楽しいか!? そもそもエリーシャが道を間違えなかったらこんな博打を打たなくても良かったんだよ!!」

「なっ———散々私のことをポンコツ呼ばわりして負け犬の如く扱った人が良く言えますね!? 全部覚えていますよ!?」

「うるさいうるさいうるさーーーい!! 聞きたくない!!」




「———あっ!! 見つけたぞ!!」




 その言葉に俺達は思わず口論を止め……此方を指差す複数の男達を見た後、お互いに見つめ合う。

 そして———。






「———今まで見つかってなかったのかよぉおおおおおおおおおおお!!」




 

 

 俺達は回れ右して一目散に逃げ出した。


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 ここまで読んで下さり、ありがとうございます。

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