第3話 よし、押し付ければ万事解決だ!
「———ま、待ってください!! 何でいきなり追い出そうとするのですかっ!?」
「何で、だと!? そんなのこれ以上地雷臭しかしないアンタとの関わりを断つためだが!? 俺は強くないんだ! そんなヤバそうなことに首突っ込めるかッッ!!」
「じ、地雷臭って何ですかっ! 私は臭くないはずですっ!!」
「今はそういうことを言ってんじゃねぇんだよ!!」
俺は金髪美少女———エリーシャの名前を聞いた瞬間、即座に彼女を俺の家から追い出すことに決めたのだが……エリーシャは華奢な身体付きのくせしてしぶとく抵抗していた。
こ、この女……何でこんなに力強いんだよ!?
俺ってC級だから別に弱くはないんだが!?
「お、おいこらッ、離せ!」
「い、嫌ですっ!! だ、だってこうでもしないとネイト様は私を追い出すじゃないですか!!」
「当たり前だろ! どうせ皇国を滅ぼしたどっかの国の刺客に追われてて、『大事な人をそいつ等から取り戻したいから手伝って!!』とか言うんだろ! 俺は分かってんだよ!!」
「わ、分かってるなら手伝って下さいよっ!」
「こ、コイツ……タダで傷を治してもらったくせに図々し過ぎるだろ!?」
「図々しくなければ生きていけません!!」
「お前が一体どんな暮らしをしてきたのかよーく聞きたいよ。面倒だから絶対に聞かないけどな!! そもそも俺は強くないって言ってんだろ!!」
何で俺はこんな初対面の奴に何度も何度も『強くない』と連呼しないといけないんだろうか。
自分で言ってて悲しくなって来たんだけど……。
俺がエリーシャとプロレス(そこに下の意味は一切ない。本気の取っ組み合い)をしながらメンタルをやられるという高度な攻撃を受けていた。
人は見た目で判断してはいけないとは良く言ったものだが……エリーシャは純情そうな見た目をしながら随分と策士だったらしい。
「何かあらぬ誤解を受けている気がします……」
「安心しろ、あらぬ誤解じゃなくて俺個人の偏見だから」
「なら良———くないじゃないですか! どっちにしろあらぬ誤解を受けているじゃないですかッ!!」
クワッと俺に顔を近付けて憤慨するエリーシャ。
そんなエリーシャを見ながら俺は天才的なことを思い付いた。
「———よし、俺の冒険者のコネ使って強い奴に押し付けよう!!」
「ちょっ———本人の目の前で押し付けようなんて言わないで下さいよ!」
俺はエリーシャからのツッコミをガン無視して、本日2度目の冒険者ギルドへと向かった。
「———頼もう!! おい、皆んなの陰のATM、ネイト様が来てやったぞ! まぁもう2度とお前らに回復薬は使わせんがな!」
「お、ついさっきナードとアルフレッドにボコボコにされたネイトじゃないか」
「うっせぇぞポンコツ。俺と同レベのテメェに用はねぇよ」
俺が冒険者ギルドの扉を開けば、俺と同じC級のポンコツ———バーンドが何やら言ってきたが、取り敢えず無視してアンクの下に向かう。
しかしバーンドは、目敏く俺が連れて来たエリーシャを見て目をハートにしてすり寄ってきた。
「おっほぉぉおおお! めちゃくちゃいい女がいるじゃねぇか! おいネイト、お前どうやってこんな子を落としたんだよ!?」
「落とっ———!?」
「おい、滅多なこと言うなよポンコツ! そんなだからポンコツなんだよ。危機察知能力の皆無なポンコツは頭もポンコツなのか?」
「さっきからポンコツポンコツうるせぇぞネイト!! 良いのか? そんなに言うならこの子俺が貰っちまうぞ?」
そう言ってエリーシャを下劣な目で見つめるバーンド。
その姿にエリーシャはドン引きしており、俺に『流石に渡さないよね……?』との視線を向けてきているが……俺は迷わず差し出した。
「どうぞどうぞ」
「ネイト様!?」
エリーシャが、歓喜の雄叫びを上げるバーンドにドン引きしながら、一歩下がって背景になろうとする俺に縋り付く。
「ま、待ってくださいネイト様! 私を強い人に押し付けるんじゃなかったんですか!?」
「でもポンコツが欲しがってるし……安心しろ。ああ見えて童貞だから手荒なことはしてこねぇよ」
「ブッ———お、おまっ———」
「———あの人は流石に嫌ですよっ。何と言うか……生理的に受け付けないんです」
「あっ……」
「何だよ寄って集ってイジメやがって! くそッ……そんな可哀想なモノを見る目で俺を見るな! お、覚えてろよ、ネイト!!」
「え、この子貰ってくれないの?」
俺がエリーシャを差して言えば……その場で立ち止まって少し考えた後、『こ、今回は勘弁しといてやるよ!!』と見事な捨て台詞を吐いて出ていった。
はぁ……まぁエリーシャがアイツの手に渡らなくて良かったな。
「……チッ、後少しで俺の下から居なくなりそうだったのに……」
「ネイト様、建前と本音が逆になってますよ」
俺とエリーシャが再び取っ組み合いを始めると……突然、ギルド内に煙幕が発生する。
それと同時に俺の危機察知がビンビンと警鐘を鳴らし始めたので、エリーシャを生贄に逃げようと走り———。
「———この男も念の為確保しとくか」
「ふぇっ?」
———出す代わりに首に衝撃が走り、意識が暗転した。
—————————————————————————
ここまで読んで下さり、ありがとうございます。
モチベで執筆スピード変わるので、続きが読みたいと思って下さったら、是非☆☆☆とフォロー宜しくお願いします!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます