エピローグ

 肥満は悪なのだろうか。


 肥満禁止法は、犠牲者三名を生み出し、希代の悪法として後世に語り継がれる事になった。


 事件当時は国民も多くの関心を寄せ、世間でも様々な議論がなされたが、次第にメディアからその話題が出る事も減り、国民の意識からも遠く薄れて行き、そうして肥満禁止法に関心を寄せる者はいなくなって行った。


 それに加えて、世にはびこる痩身至上主義は未だ根強く残っていて、相も変わらずメディアに肥満体が映し出される事は無い。


 肥満は確かにあらゆる病気の原因となりえる。そして病気は国の財政を圧迫させる。それを憂慮しての肥満禁止法だったが、その法律は決して成功とは言えない結果に終わった。


 事件前と同じように、世間は、痩せていれば美しい、痩せていれば健康、痩せていてこそ社会に適応した人間。というレッテルを崩しはしなかった。


 その思想こそが全ての悲劇を生んだとは露にも思わず、高遠らの死は段々と人々の記憶から薄れていくのだ。


 あの合宿のメンバー達は、生涯あの惨劇を忘れる事はないだろう。しかし、多くの国民にとってはその事実は記憶の屑となり、遠い過去として処理されていき、そして、歴史は繰り返す──。



────了

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肥満禁止法 無雲律人 @moonlit_fables

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