エピローグ
肥満は悪なのだろうか。
肥満禁止法は、犠牲者三名を生み出し、希代の悪法として後世に語り継がれる事になった。
事件当時は国民も多くの関心を寄せ、世間でも様々な議論がなされたが、次第にメディアからその話題が出る事も減り、国民の意識からも遠く薄れて行き、そうして肥満禁止法に関心を寄せる者はいなくなって行った。
それに加えて、世にはびこる痩身至上主義は未だ根強く残っていて、相も変わらずメディアに肥満体が映し出される事は無い。
肥満は確かにあらゆる病気の原因となりえる。そして病気は国の財政を圧迫させる。それを憂慮しての肥満禁止法だったが、その法律は決して成功とは言えない結果に終わった。
事件前と同じように、世間は、痩せていれば美しい、痩せていれば健康、痩せていてこそ社会に適応した人間。というレッテルを崩しはしなかった。
その思想こそが全ての悲劇を生んだとは露にも思わず、高遠らの死は段々と人々の記憶から薄れていくのだ。
あの合宿のメンバー達は、生涯あの惨劇を忘れる事はないだろう。しかし、多くの国民にとってはその事実は記憶の屑となり、遠い過去として処理されていき、そして、歴史は繰り返す──。
────了
肥満禁止法 無雲律人 @moonlit_fables
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
同じコレクションの次の小説
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます