人のことを少し好きになれる物語

幽霊が見える少年というと児童書では王道ではあるけど、本作には間違いなく他の作品にはない魅力が数多くある。

例えば主人公のユウは幽霊が見えることを周りからからかわれたりしていて友達もいない。それなのに本人は幽霊の友達がいるため、そのことを特に気にしていない。

ぼっちであることは深刻な悲劇として扱われることが多いなか、この描写は何気に新鮮で、そのおかげで安心して読み進めることができる。

そして、この安心さに拍車をかけているのが幽霊三人衆。とにかく、この三人のキャラが抜群で何が起きても、この三人にかかればシリアス展開も一瞬でコメディにしてしまう。

そのほかの登場人物も一人残らず魅力的で決して記号的ではない、人間味を感じる。

話のまとめ方もすごくうまくて憧れる。


あと、本作は角川つばさ文庫小説賞に応募されてるんですが、その応募要項が7万文字以下。そして、本作の文字数は69,999文字。
推敲を重ねないとこうはならないし、しっかり文章の細部まで気を配って書かれたのが伝わってきました。

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