第13話

その手紙を受け取ってからの3人の行動は早かった。

もうすっかり王族の仲間入りが叶うと思いきっていたからこそ、それが裏切られてしまったことへの反動がものすごく大きかったからだろう。

エルクを中心にして、3人はケルンの住む王宮に抗議に訪れた。

彼らが自分のもとを訪れてくることは想定していたのか、ケルンは自らそのまま3人を応接の間へと受け入れた。


「おかしいじゃないですか!!何があったのかは知りませんが、ケルン王子は我が娘であるセレシアを婚約者として決められたのでしょう??それなら我々は家族になる!だというのに絶縁がどうのこうのなど、ありえないでしょう!」

「お父様の言う通りです!!ケルン様、いくらなんでもこんな乱暴は認められません!」

「私も同じ意見です!私たちの言うことが受け入れられないというのでしたら、早急にセレシアを私たちのもとにお戻しください!彼女は私たちの大切な娘なのです!!」


立て続けにそう言葉を発する3人を前にして、ケルンはじっくりとその様子を観察していた。


「(…なるほど、この者たちのもとでセレシアは長らくの間…。この3人と共に生活していたら、セレシアがああなってしまうことにも納得がいく)」


ただ静かにたたずむケルンに対し、エルクはもう一度大きな声で言葉を発した。


「ケルン王子、王様だからってなんでもやっていいわけではありませんよ。あなたのやっていることは泥棒じゃないか。我々のもとから大切なセレシアを一方的に奪っていって、それ以外の面倒な人間たちには彼女との面会もさせない…。傲慢と言われても差し支えないのでは?」

「ほぅ、あなたが泥棒を語るか…」


…その時ケルンが浮かべた表情は、それまでとは全く異なる怒りに満ちた表情であった…。


「お前によって奪われた時間、愛、関係…。それを忘れたとでも?」

「な、何の話だ…」

「お前がとぼけても無駄だ。お前の仲間がすでに話しているんだからな」

「なっ!?」


…その言葉を合図に、数人の男たちがこの部屋に連行され姿を現した。その者たちはいずれも、かつてエルクとともに盗賊を行っていた仲間だった…。


「い、いつのまに…!?」

「聞いたよ。お前、昔の仲間たちを呼び集めてこう言いふらしていたらしいじゃないか。俺はそのうち王室に入るから、金も名誉もすべて手に入る、と」

「くっ!?」

「お前が呼び寄せてくれて助かったよ。もう昔の盗賊たちを追う手段なんてあまりなかったからな」

「…ま、まさか……この俺を…はめやがったのか…」


先ほどまでの勢いを急速に失ったエルクは、その場で顔を伏せてしまう。

しかしケルンはそのまま言葉を続ける。

残った二人に対して。


「君たちがセレシアにどう当たっていたのかも、もう検討はついている。その罪はしっかり償ってもらうが、当然その覚悟はできているんだろうな?」


怒りをも感じさせるその言葉を聞いて、2人はケルンに泣きつき始めた。


「わ、私は本当に何も知らないのです!!私は本当にセレシアの事を愛していましたし、今だってそれは変わっていません!!」

「お、お姉様との関係は私だって良好でした!!な、なにも悪いことなんてありませんでした!!」


そんな二人の姿を見て、ケルンはやや呆れにも似た表情を浮かべた。


「…正直に自分たちの非を認めたなら、今後の事も考えようと思っていたのだが…。仕方ないな、こうなってしまっては」


ケルンはそういいながら、自身の懐から一枚の紙を提示した。

その紙をみて、二人は一気にその表情を青白くしていった。


「…お分かりのようですね?」


それはリディアとラルべによって書かれた告発書だった。

…セレシアに対して3人がどのように当たっていたかを示す、ほかでもない証拠となるものだった。


「そ、そんな……」

「う、うまくごまかせていたはずなのに……」


2人もまたエルクと同じく、その場に崩れるほかなかった…。

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