第7話

バギッ!!

「っ!!」


お父様の振り上げたこぶしが私の頭に命中し、傷みが全身を突き抜けていく。

この痛みはいつも以上に強く感じられた。


「…お前は黙って俺の言うことに従うほかないというのに、それもできないとは。いやそれどころか、リーゼの大切なお菓子にまで手を付けるとは…。もうお前のことを許せという方が無理な話だっ!!!」


…私をそうさせたのはほかでもない、あなたたちの方でしょう?

なんて口にしたら、今以上に痛い思いをさせられるであろうことは明らかであるため、私は言葉を自分の胸の中に押し込んだ。


タイミング悪く屋敷に戻ってきたリーゼに、お菓子を食べている姿を見られてしまった私。

あの時は絶望感しか感じなかったけれど、それでもなお有り余るほどにその時口にしたお菓子はおいしかった。

…味だけでなく、それに関係するなにかの記憶があったからだろうか?


「ねぇお父様、もう絶縁してしまいましょう?こんな泥棒お姉様、私たちには必要ありませんわ♪」


殴られる私の事を上機嫌に見つめながら、リーゼはそう言った。


「絶縁か、確かにそういうタイミングかもしれないな…。はぁ、俺がこんなにも愛情をかけ続けてきてやったというのに、こんな形で裏切られるとは…。もういい。ここから出て行って二度とその顔を見せるんじゃないぞ?」

「…」


お父様は私にそう言い放つと、何かを取りに行くように足早に私の前からさっていった。

残されたボロボロの姿の私のもとにリーゼが接近し、言葉を発した。


「ぷーくすくす…。ざまなないですわねお姉様♪お父様はもう捨ててしまうそうですよ?もう決まりのようですよ??私のお菓子に手を付けたから追放なんて、無様すぎて笑ってしまいますわね♪」


彼女はそこから先も何か言葉を発していたけれど、頭がふらふらする私にはあまり聞こえてこなかった。

そうこうしているうちに、一枚の紙を携えたお父様が私の元まで戻ってきた。


「これはお前を我が家系から永久に追放する絶縁書だ。もうすでにサインはしてある。これをもってこの家から出ていき、動物にでも食べられて死んでしまうんだな」

「…わかりました…」


私は何も反論せず、お父様に言われた通りここから出ていくことを選んだ。

もう死ぬまでこの生活が続くものと思っていたから、どんな形でもここから解放されることがうれしく思えたからだった。


「…それじゃあ、出ていかせていただきます。今までありがとうございました…」


お母様はまだ留守だから、私が出ていくところを見ていたのはお父様とリーゼだけ。

でも二人とも私の言葉には返事をすることはなく、無言のまま私を追い出した。

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