玉置さんに近づける

私は係長になった。

少し玉置さんに近いた。


LINEでも毎日話している。

玉置さんの生活リズムも把握した。

玉置さんは、眠いといって電話を切ろうとする。私は別の話をする。また眠いという。また...の繰り返しで。


「わざとやっているでしょう」


私は心の中で笑った。


「まだ話せるはずですよ。前はもっと話していました」


「じゃあ切るね」


一方的に切られてしまった。



後日、私は玉置さんをイタリアンのお店に連れて行った。ディナーとして。

イタリアンのフルコース、こんなものを食べた事は一度もない。

ワインも飲みやすく、スルスルと入る。これは二日酔い注意だ。

時間をかけて食事を終えた。雑談をたくさんした。

カッコつけて、私は2人分払った。


「そんなことしなくても。」


私は玉置さんにこう言った。


「その代わりに、吉田うどんを食べてみたいです。ドライブに連れて行ってください。」

「かたいよ」

「本場のが良いです」

「わかったよ。今度行こうね」


別れ際、玉置さんはハイタッチをしなかった。

どんどんスキンシップが減っている気がする。

私が拒んでいると玉置さんは思っているようだ。

違うんです、玉置さん。

玉置さんに触れられたら、私はどういう言葉を言うかわからない。

イタリアンを食べながら私は、ずっと玉置さん、玉置さん、と顔を見て思っていた。


玉置さんは私をどう思っているのだろう。


私と反対なの?

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