長電話の先にあるもの
田中さんは長電話が好きだ。
切ろうとすると必ず「ふにゃ」と脱力感を言葉にする。そして、また違う話をしたがる。
夜は、
「眠い。もう一緒に寝よう」
と言って、罪悪感を感じながら電話を切る。
昼は、
「買い物しないといけないから」
と言い、電話を切る。
余談だが、彼女には交際をするために通過しなければないといけない儀式があるらしい。
お茶→昼食→夕食→お付き合い
私は彼女と夕食を済ませている。ただ、彼女の性的嗜好はわからないから、本音を聞いたり踏み入れたりはしたくない。怖い。
この前、ショッピングモールで買い物をしたり食事をした時に、彼女はえらくご機嫌だった。
私はタイ料理が好きなので、それを取り扱っているお店で買うようにそそのかされたり。
ショッピングモールから1駅歩いて桜を見たり。
高校生の頃のような錯覚を覚えた。
ああ幸せだ、私はここまでで良いかもしれない。これ以上は望まないし、これ以上踏み入れるのは怖い。
「また来たいです、玉置さん」
「そうだね。田中さん。また来ようね」
風で桜が散る。
田中さんは本当に綺麗だ。
ああ、抱きしめたい、好きって言いたい、その手に触れたい、キスしたい。
歩いているうちに、田中さんと私の肩が時々触れ合う。少し触れる事で高揚感を覚える。
歩いているだけでそんなに肩は触れ合うものなのだろうか。
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