私はね、男子が好きなの

私は、後輩の手をふりほどいた。

そして一言、彼女にこう言った。


「私は男子が好きなんだよ」


後輩は下がった。


「田中さんとは?」


「ただの友達だよ。友達以上恋人未満」


「でもなんで、玉置さんは田中さんと一緒にいるときは辛そうなんですか?」


「さあね」


私はその場をあとにした。


男子が好きだったらどれだけ楽だろう。

女子同士なんて稀だから。


後輩は私に、死相が出てるって言っていた。

どうしたらいいのだろう。

田中さんが男性と仲良くしているだけで、目の前がチカチカする。チカチカ、そう、チカチカ

最近食事取ってない。

食べる気がしない。


はっと気づいたら、私は仰向けに倒れていた。

そして、私をたくさんの社員は囲っていた。

救急隊員もいた。


「救急車に乗りますか?」

「このあと仕事があるので、乗らないです。お気遣いありがとう御座います」

「乗った方がいいですよ」

「いや、いいです」


よく聞いた心地の良い声が、ぼんやりとした私を正しい方向へ導く。


「救急車に乗せてください」


「わかりました」


隊員がストレッチャーを持ってきた。

複数の隊員が私をストレッチャーに乗せ、

救急車の中で受け入れ可能な病院を探した。



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