本編

【スポット1 ロックハート城入り口】


ようこそ、ロックハート城へ。

ロックハート城は、1829年にウィリアム・ロックハートによって建てられた歴史あるお城です。

もとは英国スコットランドに実在していたお城ですが、1993年に群馬県高山村に移設・復元され、現在はテーマパークとして多くの方にお楽しみいただいております。

美しいロケーションから、ドラマや映画のロケ地としても利用されているんですよ。


ライオンの石像を通り過ぎると、そこはもう中世ヨーロッパの世界。

鮮やかな石畳を軽快に歩いて、さっそく探索してみましょう。


……おや? どこからか声が聞こえてきませんか?


「はあぁ。どこかに素敵な人がいないかしら?」


女性の声です。ほら、後ろを見てください。

ライオンの石像の傍に女性が座っています。ブロンドの髪をした可愛らしい女性です。

ふわりと裾の広がったドレスをまとって、まるでプリンセスのようですね。

あ、目が合いました。


「あら、私の声が聞こえるの? 珍しいこともあるものね」


女性はにっこり微笑みます。貴方の存在に気付いて、駆けて来ました。


(タッタッタ、走る足音)


「はじめまして。私はプリンセス・ハート。ロックハート城に住んでいる亡霊よ。……ちょっと、亡霊だからって怖がらないで頂戴。悪さなんてしないわ。私はここに訪れるゲストを観察しているだけよ」


「貴方、ロックハート城に来るのは初めて? ……へえ、そうなの。ここ、ロックハート城は本物のお城なのよ。スコットランドに建てられたお城を日本まで運んできたの。お城を運び出そうだなんて、凄いことを思いつく人もいるものね」


自己紹介を終えたプリンセス・ハートは、きょろきょろと辺りを見渡します。


「ねえ、ひとつ聞いてもいいかしら? ロックハート城にはね、毎日たくさんのカップルが訪れるの。手を繋いだり、写真を撮ったり……。あの人達は、一体何をやっているのかしら?」


「……デート? そう、あれはデートっていうのね。なんだかとっても楽しそうだから、羨ましいって思っていたの。……私? デートなんてしたことないわ。恋だってまだなんだから……」


プリンセス・ハートは、じーっと貴方を見つめています。どうしたのでしょうか?


「ねえ、お願いがあるの。私とデートをしてくれない? その代わりに、ロックハート城を案内してあげるわ」



【スポット2】


石畳の階段を登った先には、中世ヨーロッパを思わせる古城が佇んでいます。外壁の石材がちょっとくすんでいるのも、歴史を感じさせますね。


おや? プリンセス・ハートが階段の上から手招きをしていますよ。


「こっちにいらっしゃい!」


「ロックハート城ではね、ゲストにドレスの貸し出しをしているのよ。プリンセスドレス体験って呼ばれているみたい。不思議よね、どうしてみんなわざわざドレスに着替えるのかしら?」


「……へえ、デートっていうのは身なりを整えてするものなのね。だからみんなお洒落をしていたのね」


プリンセス・ハートは、貴方の服装を上から下までじーっと見つめています。


「ねえ、貴方も着替えてきたら? ここには女性用のドレスが350着、男性用のタキシードが50着、子ども用のドレスが80着あるの。ウィッグやティアラも貸し出しているから、本物のプリンセスやプリンスになれるわ」


「え? 恥ずかしい? 何言ってるの? 貴方とっても素敵だもの。似合うに決まっているわ。何なら私が貴方に似合うドレスを見繕ってあげましょうか?」


「……なーんてね、着替え終わったらお城の前に来て頂戴。一緒に写真を撮りましょう」


「あ、でも、私が写りこんだら心霊写真になっちゃうわね。うふふふふ」



【スポット3】


ロックハート城の敷地内には、「ウィリアムズガーデン」と呼ばれるイングリッシュガーデンがあります。


迷宮庭園をイメージした「緑のラビリンス」やアヒルが泳ぐ「水辺の庭」など見どころが盛りだくさん。ガゼボでお喋りをしながら、のんびり庭園を眺めてもいいですね。


おや? プリンセス・ハートが大きく手を振っています。行ってみましょう。


「こっちよ。来て頂戴」


「ここの庭園って素敵でしょう? ロックハート城がスコットランドにあった頃の風景を再現しているのよ。かつてはね、敷地内に馬が放牧されて、ゴルフグラウンドもあって、とっても素敵な場所だったの」


「そうそう! ウィリアムズガーデンの中でも一番見てほしいのは、やっぱり薔薇ね。ここでは『究極のバラ』と呼ばれている薔薇が植えられているのよ」


「え? 薔薇より君の方が素敵だって? ……そんなの言われたのは初めてだわ」


プリンセス・ハートは頬に手を添えて恥じらっています。可愛らしいですね。


「そんなこと言ったら、好きになっちゃうわよ?」



【スポット4 】


ウィリアムズガーデンの先には「桂由美ブライダルコレクション館」があります。

ここでは日本にウエディングドレス文化を根付かせた桂由美さんのドレスが展示されています。中にはパリコレに出展された貴重なドレスも展示されているんですよ。


館内に入ると、ドレスを着たマネキンがずらり。


……実は私、ここに来ると大勢の人に見つめられているような気分になるんです。気のせいだといいのですが。


「なにぼーっと突っ立っているの? 早くこっちにいらっしゃい」


「ここのドレス、とっても素敵なのよ。いつ見てもうっとりしちゃうわ。私もいつか着てみたいなぁ」


「……え? 君が着たら絶対綺麗だって? もうっ! 恥ずかしいじゃない! でも、貴方がそこまで言うなら着てみようかしら。お姉さーん、私にドレスを一着貸してくださらない?」


プリンセス・ハートがドレスを着たマネキンに話しかけています。一体彼女には何が見えているのでしょう?


「え? お姉さんって誰のことかって? そこに並んでいるお姉さんのことよ」


「あれはマネキンじゃないかって? 失礼ね。お姉さん達、昼間は大人しくポージングしているけど、夜になったら動き出すんだから」


「ほら、いまちょっと笑った。分からない? うふふふふ」



【スポット5】


ロックハート城の敷地内には「スプリングベル」と呼ばれる高さ20mの塔があります。最上階には鐘が設置されており、鐘を鳴らして愛の告白をすると、二人は結ばれるという言い伝えがあります。


最上階までは階段で登ります。7階ほどの高さがありますが、頑張って登ってみましょう。


おや? プリンセス・ハートがドレスの裾を気にしながら登っています。エスコートしてあげてみてはいかがでしょう?


「あら? エスコートしてくれるの? 嬉しいわ。貴方も足元に気を付けてね」


(トントントン、階段を登る音)


「え? グルグル螺旋状に登ったから目が回った? もうっ! あと少しだから頑張って!」


(トントントン、階段を登る音)


「ほら、頂上まで着いた。見て、頂上からの景色。綺麗でしょう? 豊かな自然の中に古城が佇んで……。スコットランドの風景を思い出すわ」


「ねえ、せっかくだし一緒に鐘を鳴らしてみない? いいわよね?」


(カランカラン、鐘の音)


おや? プリンセス・ハートがもじもじしながら貴方を見つめています。どうしたのでしょうか?


「私ね、貴方といると、とっても楽しくてドキドキするの。これってもしかして恋なのかしら?」


「貴方は? 私のこと、どう思っているの?」


「はぐらかさないでよ。もしかして恥ずかしがっているの? ねえ、貴方の気持ち、正直に教えて?」


「そう、言わないつもりなのね……」


プリンセス・ハートは、頂上から螺旋階段を見下ろしています。


「そうだ、ここからコインを投げてみない? 素敵なことが起こるかもよ?」


(チャリン、コインが落ちる音)


「そう、上手ね」


「わっ!!!」(脅かすような声)


「うふふ、冗談よ。突き落したりなんかしないわ。だけどここから落ちたら貴方も……。うふふふふ」


申し訳ございません。ひとつ大事なことを言い忘れていました。

ここ、スプリングベルの頂上から一階にある愛の泉にコインを投げ入れると、二人の心は永遠にロックされるという言い伝えがあるとか……。



【スポット6 】


ロックハート城の敷地内には「セントローレンス教会」があります。1800年代の城主専用礼拝堂を忠実に再現した伝統的な教会となっています。


こちらの教会では実際に結婚式を挙げることも可能なんですよ。クラシカルな教会で挙げる結婚式は、新郎新婦のみならずゲストにとっても特別な思い出になることでしょう。


はっ!? おやおやおや、なんということでしょう!

プリンセス・ハートがウエディングドレスを着てこちらにやって来ます。

まさか、彼女は貴方のことを……。


「お待たせ。……あら? どうしてウエディングドレスを着ているのかって? 決まってるじゃない。貴方と結婚するためよ」


「私、貴方に恋をしたの。こんなに誰かにドキドキしたの、初めてよ。この先もずっと一緒にいたい。だから私とここで暮らしましょう」


(ガシャーン、物を落とす音)


「そんなに怯えた顔しないで。古城の亡霊が花嫁じゃ不満? もしかして怖がってる? 大丈夫よ、すぐに慣れるわ」


(タッタッタ、逃げる足音)


「逃げるなんてあんまりだわ。貴方、自分が何をしたのか分かっているの? 妙齢の女性を惚れさせておいて、それっきりなんてことはないわよね? ちゃんと責任取って」


「うふふふ。逃げようとしても無駄よ。貴方のハートはもうロックしているもの。いい加減、覚悟を決めたらどうなの?」


(コツコツ、足音)


「さあ、ひざまずいて言いなさい」


Will you marry me?

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ロック・ユア・ハート ~古城のプリンセスと巡る中世ヨーロッパの世界~ 南 コウ @minami-kou

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