第2話 國産み≪ねるねるねるね≫ その3
46億年前、地球は赤かった。
地球の元になった小惑星などがぶつかり合い1つの塊へと成った。その際衝撃と摩擦と圧力によって莫大な熱エネルギーが産まれて、鉄も岩石もドロドロに融解したマグマの塊となったのである。
神様はその様に説明してくれた。そして―――
「今の新世界はそこにボクたち神の力も加わった状態で太陽も星も何もかもグッチャグッチャに混ざっているのだ」
だから何でそこで得意げになれるんだよ。神様どんだけポジティブ思考してんだ。
「混沌、盤古、根源、原初の泥、乳海、カオスなどなどいろんな呼ばれ方をしている状態だね。ボク的には魔女のスープって表現が好きかな」
「お前ら料理下手だろ」
何でもかんでも鍋に放り込んで強火で煮るだけとか雑過ぎるだろ。
「で、これは如何にするのじゃ?」
「これじゃあどうしようも無さそうだけど」
異世界モノは数多くあり中には地獄のような世界があるけど、行くこともできない異世界ってどんだけだよ。
「もちろん対策は考えている。こちらの世界から干渉して世界を加工するんだよ」
「簡単に言うけどスケールが違い過ぎるんだけど」
「そこは大丈夫だよ。こちらからの干渉は物理的な距離や大きさは関係ないから。それにボク以外の神がスカウトした
「ふむ、それで具体的にはどうするんだ」
とりあえずやってみることが出来るかどうか確認しないと。
「簡単だよ、この棒でかき回せばいいんだよ」
そう言って神様は1本の黒い棒をどこからか取り出した。
それは長さが―――長さが。
「ん?これなんかおかしくないか」
何故か長さが分からない。神様に比べてずっと長く5mくらいに見えたり10mだったり、逆に30㎝位にも見えてしまう。
一抱えもある柱の様にも指先でつまめる爪楊枝だったり。
材質も黒いという以外は木材なのか鉄なのか、プラスチックやシリコンなのかも判別できない。
「この棒には質量が無い。つまり物質でなくただの概念なんだ。それ故に長さとか太さはもちろん重さもない」
「そんなものどう使うんだよ」
「イメージでいいんだよ。手で持って振り回すつもりになれば使える」
そう言って神様はその棒を投げてよこした。
両手でつかもうとするといつの間にか手の中にカクテルを掻き混ぜるマドラーのようなモノがある気がした。
「それを君たち2人でつかんで新世界を掻き混ぜるイメージをすれば実際に新世界を掻き混ぜられる」
「マジかよ」
「マジマジ」
両手をワキワキさせながら言われてもリアクションに困る。
「量子力学に人間が観測することで世界が確定するってあるだろ」
「あのSF理論か」
「あれ、実際に物理的に証明されてるよ」
「マジかよ!」
「マジマジ」
だからワキワキさせるな。流行らせたいのか?
「それと同じように世界を創使者のイメージで確定していくんだよ」
「なるほど」
「しかしそれじゃと日本神話におけるイザナミノミコトとイザナギノミコトによる國産みの儀の様じゃの」
ジョーカーの言った言葉に俺も肯いた。
神様だけに神話を尊重してるんだな。
「そうそう、まさにそれ。新世界を攪拌して広げて形を整えるんだよ」
「なるほど、それで魔女のスープと表現したんだ」
「そうそう、世界を練って、練って、グルグル混ぜて太陽や星をねるねるねるねして欲しいんだよ」
「お前絶対にねるねるねるねって言いたくて魔女のスープって表現しただろ!」
色々だいなしである。
「テレテッテ~~、美味い!」
うるせぇよ!
中年フリーターのオッサン、人には言えない秘密の仕事をしてます。 軽井 空気 @airiiolove
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