第2話 國産み≪ねるねるねるね≫ その2

「それで何でまた手出しできなくなっているんだ!」

「それはね――――今まで我慢していたのと1からの世界創造に皆テンションカンストして――――もとい、張り切り過ぎて」

「つまり1柱が好き勝手やっただけでも手に負えなくなっていたのに、今度は全員で好き勝手に全力ぶち込んだと?」

「控えめに言ってそう」

「ぶっちゃけると?」

「やりすぎた」

 はぁあああああああああ~~~~~~。

 ため息が長くなる。何となく状況が読めてきた。

「それで神様が手を出せなくなって代わりに俺達にその後始末を任せるという事か」

「そういう事」

「神様が無理なことを人間が出来ると?」

 話を聞く限り神様の力は当てにできないし、都合の良いチート能力があるわけでもない。これは普通にムリゲーだろ。

 ファンタジーな事でも現実は現実なんだ。

「今の新世界はボクたちの力がぐちゃぐちゃに混ざり合って、形とか方向性のようなモノが無い状態なんだよ。そこにボクたちが手を出したら」

「出したら?」

「火に油を注ぐと言うか、油田に松明持って突っ込むのと同じだよ」

「大惨事だな」

 文字通りの放火である。

「しかもエネルギー総量は超新星爆発を凌ぐ」

「どんだけブッ込んでんだよ」

 現実感が無いけどこれが現実とか悲しいよね。

「だとしてもじゃ」

 俺が涙をこらえているとジョーカーも口をはさんだ。

「人間でしかない小僧めに神の力をどうさせるのじゃ」

 確かに、神様が出来ないことを代わりに―――と言ってもその方法はどうするのだろう。

「人間には力が無いから発火するような火花は出ない、そこにボクの権能だけを与えたんだ」

「どういう事」

「神の力はないけど神の力を操る権利だけ与えたってことだよ。そして力だけは新世界に腐るほど、神の力は腐らないから燃えるほどってところかな」

「むしろ爆発するほどじゃろ」

「そう。それほどの力はあるからそれを加工して安定させてほしいんだよ」

「なるほど」

「じゃが、それじゃとワラワは必要あるまい」

 つまりジョーカーは自分は必要ないだろうから帰っていいか?と言いたいわけだな。

「そうは行かないんだよ。神の力には属性がある、しかし人間は中庸でなければならない。でないと狂ってしまう」

「神様の力怖いな!」

「そうならないために反対の属性で天秤のバランスを取らなければならない」

「なるほど、つまりワラワがオヌシの力を中和する反属性という訳じゃな」

「アンチテーゼとかカウンターウエイトって表現の方が気が利いているよ」

 なるほどね。俺が役目を果たすにはジョーカーの協力が必要なんだろうけど、たぶん本来はジョーカーには協力する義理は無かったんだろう。

 そこを何か条件を付けたか強引に連れてきたかしたしたのだろう。

 そしてだまし討ち的に名前で俺に縛り付けたという事だろう。

 そりゃ俺に対する態度も硬くなるよな。

 ジョーカーは今だに俺と目を合わせてくれないからな。

 信用しろとは言えないがせめて恨まないでほしい。

「それでここからどうやって新世界に行くんだ」

「そうじゃの、さっさと始めようではないか」

「2人共やる気があるのはいいけど焦らないで」

 神様が俺達をなだめる。

「まずは現状を把握して。今の新世界はまだ手付かずの原初のままなんだよ」

「分かっておる、じゃからはようこの目で見に行きたいのじゃ」

 ジョーカーの言う通り。まずは現地を見てみないことには計画も立てれない。

「だからそれを待てって、まずはこれを見ろ」

 そう言って神様は指パッチンをする。

 するとホログラム画面のようなモノが開いて。

「———これは太陽?」

 画面には暗い宇宙に浮かぶ炎の球体が写っていた。

「コレが新世界だよ」

「「…………はっ?」」

 見事に俺達の声がハモった。動きも鏡合わせの様に同じタイミングで神様の方を見やる。

「言っただろ、ボクたちの力が混ざってなんにでもない状態だって、新世界にはまだ太陽も星も大地すら区別が付いてないんだよ」

「原初過ぎるにも程があるだろ!」

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