第1話 創使者≪クリエイター≫ その9

「それでね―――」

 衝撃の話をさらりと流して話を続けようとする神様に待ったをかける。

「いやいや、諦めたってこの世界を見捨てたんですか!」

「うん」

「そんなあっさりと。人間はどうすれば良いんですか」

「どうもこうも今と同じ様にしてればいいんだよ。別に破滅が決まったわけじゃないんだ。ボクたち神々が手を出せなくなったから他所に行くだけだよ」

 神様はごく当たり前のことだろと言わんばかりに告げる。

「存在を証明できないから居ないのと同じなんだから実際に居なくなっても変わらないよ。まぁ1柱だけは一緒に居てくれるけどね」

 そうかもしれない。

 神様を信仰している人も神様そのものでなくて人間の都合で歪められた神様を

 ならば本物が居なくなっても信じていれば同じだろう。

「……でも、それだと本物を知ってしまった俺はどうするんですか」

 真っすぐ神様を見れない。突き放されたらどうするんだろう?

 って考えているけど今まで神様を信じてなかったくせに調子よすぎだろう俺。こんなの助ける価値なんかないよな。

 それが分かっているから俺は力なく俯くしかない。

「だから一緒に新世界を創るんだろ」

「——————————————————え?」

 うっくり顔をあげるとジョーカーがしたり顔で頷いている。

「ふむ、なるほどのぉ。つまりワラワたちは新世界への移住が認められているという事なのじゃな」

「そうだよ」

「え?だって人間は手に負えないから見捨てるって」

「そうだよ」

「でも俺は」

「人間全体ではもういらないけど個体レベルでは無事なのが居るからそういうのを見繕っている」

「俺だけ……」

「ボク以外にも条件を満たした者を拾っている神は居るけどね。ボクは今の所君だけだよ」

「秘密厳守なのは」

「もちろん余計なバグを持ち込まないようにするため」

「俺がもし他人に喋ったらどうなるんだ」

「君はもうボクと契約しているから喋れないようにギアスが掛かっているよ。その上で万が一の時は君ごと関係者を消滅させる」

 それもノーリスクじゃないから使いたくはないけどね、と神様呟いている。

「これは本当に人には話せない秘密の仕事なんだな」

「そういう事」

 腹をくくるか。

 どうせ俺は40前にもなってフリーターやってる甲斐性無しなんだ、元から世間から顧みられていないんだから1人だけ秘密の仕事で美味しい思いしても文句言われることはないだろう。

「よし。それじゃあ説明の続きを頼む」

「うん。それでねボクたちは新しい世界を創造することにしたんだけど、君たちの仕事はその新しい世界を生物が住めるように開拓してほしいんだ」

「……うん?なんだって」

「だから新世界の開拓がお仕事」

「聞きたいのはそこでは無くてじゃな、なぜ神である貴様でなくてワラワたちが新世界の開拓を任されるのかと聞いておるのじゃ」

「いや、そうは言ってなかったよね」

「言外のニュアンスという奴じゃ、ナコトノカミという言葉の神が分からんはずもないじゃろ」

 ん?この神様は言葉の神様なのか?

「で、理由は何じゃ」

「それはボクたち神は新世界に直接手出しが出来なくなっちゃってるからだよ」

「———まさか」

「どういうことだよ」

 遠い目をし始めたジョーカーに聞いたが答えたのは神様だった。

「そのまさか、————やらかしちゃいました♪」

 すっげぇ笑顔でのたまいやがった。

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