これは光を失った僕が、もう一度世界と向き合うまでの物語。

 ハリケーンの被害に遭い、両目の光を失った少年が主人公。両親は主人公のために、一匹の犬を飼うことにした。それが題名のハミングだが、鼻歌という意味ではない。少年は白杖を手に、犬の散歩をしていると、ギターの音が聞こえてきた。このギターを弾く青年との出会いが、少しずつ少年を変えていく。
 ある日青年は、主人公と共に車である店に連れて行ってくれた。しかしメニューどころかメニューに施された点字も読めない主人公は、商品を選べず困っていた。そこでメニューを言葉で説明してくれたのが、女性店員だった。主人公はこの女性店員の持つ違和感を感じ、女性の事を気にするようになる。女性はある重大な悩みを抱えていたのだ。
 主人公は女性の悩みを解決するために奔走する。
 しかし、突如として協力者だった青年が姿を消した。
 そして町の人は青年の名前を知らなかった。

 女性の悩みとは?
 青年の正体は?

 盲目になった少年の成長譚の要素が強いが、それ以上の物語の力がある。
 人は誰でも盲目であり、当たり前に享受しているものが見えていない。
 しかし、そのことに気付くとき、今までに見えていなかった世界が見えてくる。

 とてもテンポよく描かれていて、読後感も清々しい。

 是非、是非、御一読下さい。

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