ジャックのたてた家

　二村京子は、埼玉県の郊外に建てられた家で娘の千佳と暮らしていた。
　自宅で介護していた義母は一か月前に亡くなり、旦那は滅多に帰ってこない。
　娘を大切に思う京子であったが、千佳は不穏な言葉を口にする。
　亡くなる前の義母が過ごしていた部屋を指さし、「うるさい」というのである。
　小さい子供の言うこと、と気にしないように努める京子であったが、その胸中には一抹の不安があった。

　千佳は、義母に教えられた童謡をよく歌っていた。
　「ジャックのたてた家」。前のフレーズに新しく言葉を付けたしながら歌詞を増やしていくその歌は、千佳のお気に入りだった。
　しかし、ある事実が露見したことをきっかけに、千佳の歌が京子を追い詰めることになる……。