第6話

「どうです。かなり良い物件でしょう」


 その家は、街を一望できる見晴らしの良い住宅地の一画にあった。

 中古の物件だが、築十年とまだ新しい。

 土地代込みで、価格も随分とお買い得だ。

 上の子供も大きくなり、借りているアパートでは手狭になってきた。

 不動産屋の言う通り、条件も良い。

 ここで決まりだろう。


「あら、タクちゃん。そんな歌、どこで覚えてきたの?」


 妻の声がした。

 振り返ってそちらを見ると、五歳になったばかりの次男が舌足らずな声で歌っていた。

 童謡だろうか。

 小気味良いリズムだ。

 通っている幼稚園で覚えてきたのだろう。

 埃一つ落ちていないその家に、次男の歌う童謡が響き渡っていた。


「……これはジャックのたてた家」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ジャックのたてた家 エビハラ @ebiebiharahara

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ