クトゥルフ神話にはあまり明るくない人間でも、十分楽しめる良作です。系譜を組みつつ、怪奇小説として巧みに昇華されていると感じました。
趣きとしてはライト文芸における、連作型オカルトホラーに近い骨子をしているものの、第二章・三章では閉鎖的な村の不気味さを漂わせており、それがまた骨太な印象を強めているのかもしれない。
「妖怪ものではない」
「『怪異と仕業と思われていたが実は人間が犯人だった』系事件ではない」
「クトゥルフ神話の知識を多分に必要としない」
……などなど、オールドファッションな伝奇小説に、男の娘と相棒を加えた化学反応を是非とも堪能していただきたい。