心にずしりとのしかかるSFアクション小説

カラーコンタクトレンズの形をした最先端の生体認識デバイス、スマートアイズ。

多岐にわたる機能を備えた装着型デバイスです。ステータススキャンにより見た相手の素性を知ることができます。透明効果を作動中の裸眼では見えない相手を「見る」こともできます。もちろんIoT機能を有し、インターネット上の情報を利用することもできます。

このような、(近?)未来的な技術が飛び交う世界で、十三歳の兄と十二歳の妹がさらわれようとする、息もつかせぬ展開から話は始まります。

淫靡で、痛烈な痛みを伴う第一章に続くのは、一見のどかな恋人たちの光景。しかし、主人公、桂くんとその恋人金美さんを取り巻く運命の歯車は確実に不気味な軋みを立てながら動き始めていました。

装着型のスマートアイズにスマートシューズ、体内投与型の生体ナノマシンといった、常人が持つ力をはるかに超える力を人間に付与する道具のかずかず。かたや、人間の能力をはるかに凌駕する存在として人間の前に立ちはだかるAIたち。AIに支配されたディープレッド社の目指すところはいったい何なのでしょうか。

乱れ打つ言葉たち、目まぐるしく世界を駆け巡る言葉たち、閃光を放ちながらはじけ飛ぶ言葉たち。終わりに近づくにつれ、物語は、神話とでもいうべき嫋々たる厳かな雰囲気を漂わせ、新たな存在の誕生による人間の可能性をも感じさせてくれます。

アイカノの「アイ」。これはeyeであり、AIであり、愛でもあります。力強く、柔らかく、何ものにも屈することなく、いくつものアイを貫きながら紡ぎ出された物語です。

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