静かに、染みる。

この物語を読ませて頂いてひとこと紹介するならと考えて真っ先に思い浮かんだのが、静かに、染みる、でした。

急速にではなくゆっくりと。でも読み進める程に静かに染みて、自分自身も物語の世界の一人になってしまったのではないかとと錯覚してしまう程に入り込んでしまいます。

雪国を舞台としたこの物語には、卵を他の鳥の巣に産み付ける──託卵と呼ばれる習性を持つカッコウという鳥が根幹にあります。そして繊細で丁寧な情景描写によって、重厚な人間ドラマをとにかくリアルに描かれています。血の繋がりとは何なのか、家族とは何なのか、そのかたちは全て似通ったかたちでもいいのか、そして人生とは何なのか、そんなことを強く訴えかけられている気がしました。この圧倒的な世界観の余韻は、読み終えた今もずっと続いています。

この作品を読むことが出来て良かったと、心からそう思えた作品でした。

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