震えた

 今、読み終わった。

 身も心も震えた。
 何か作者に伝えなければ。衝動のままコメント欄を開いたが、自分の文章力では言葉にならなかった。

 コメントは作者へ向けたコミュニケーションだが、レビューならある程度は独り言でいい。なので、こうしてレビューを書いている。

 初めの数話のうち、俺はかなり失礼なことを考えていた。よくわからないプロローグに、あまりストーリーの動きが感じられない冒頭。ラノベに慣れた身には少ない改行に重い描写。全て、読者が離れる典型的な理由に思えて「これは無理かもな」と思った。

 それでも先に手を進めたのは、キャッチコピーにあった雪国という一言のせいだった。雪国に生まれ雪国しか知らないで育った自分には、雪国に色々と思う所がある。
 一体何が描かれるのだろう、それは俺が知っている光景なんだろうか。生意気にも「見せてもらおうじゃないか」なんて考えていた。

 すっかり、やられてしまった。
 雪国の情景の手触りが、俺とは無関係であるはずの人間模様から目を逸らすなと訴える。
 何もかもがますます重くなる。人間たちの思惑と過去が、重なり絡み合い、少しの隙間さえも黒く塗りつぶして、どこまでも終わりの見えない底へ底へ沈んでいくかのようだった。
 その陰鬱さとは反するように、俺は読み進めるのを止められなくなった。

 暗く暗く重く重く、だからこそのあの最後だった。

 正直、ネタバレ的なことは一切書きたくない。上手く書く技量が俺にない。他の方のレビューを読んだ方がいい。読んでみようかな、と思った方へ。どうか、飛ばして先を読まないでほしい。

 素晴らしい体験を、ありがとうございました。

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