それは強くて孤独で長い時を生きる。それは彼方を照らす。

好きの塊だった。

まずは、海。
語ると長くなるからやめておくが。

灯台も好きだ。眺めのいいところにあるし、無駄のない姿をして、強くて孤独で長い時を生きる。帰るもの訪れるもののために彼方を照らす。その光は自分自身を照らすことはない。

遠くを想うものも好きだ。これは、元を辿れば、遠くに旅するもののことだ。
何かが遥か遠くにあるということ――例えば、ボイジャーが太陽圏を超えて今も離れ続けていると思えば、寂しさと恐れと勇気と尊敬と何かよくわからないけど悪くはないものを足して割ったような情動が湧き起こる。

異なるもの同士の接触も好きだ。異種族、異民族、異星人。未知のものに対する恐れと拒絶。好奇心。受容への変化。

そんないくつもの好きが、二人の『人間』同士の澄んだ友情に綴られている。

気取り過ぎず淡白すぎもしない文章が心地よい。言葉が記憶を呼び起こして空想の情景に再構成する。少しの引っかかりもなく。掠れかけていた色は鮮やかに。踊る水の向こうには海と空が入り混じり、濡れた砂を踏む感触さえ蘇る。

灯台は、今も照らし続けているのだろう。
待ち人がいつか帰ることを俺も願う。

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