雪国と高齢者介護のリアル……そして積雪の日に事件は起きる!

出だしは、リアリティ溢れる豪雪と過酷な在宅介護に翻弄される男性の姿を描いていますが、途中で物語が一変します。

一見、積雪による交通事故に思われたが、この事故にはどこか裏があり……。

そこから、過去に遡り、さまざまな関係者からの語り口で、事故(事件)の背景が詳らかになっていきます。

この物語構成が実に巧妙で、湊かなえさんの『告白』にも似た、おどろおどろしい雰囲気がありながらも、読者を引き付けてガッチリ離さない、それくらいの魅力があります。

雪国での戦い、過疎地域のリアル、壮絶な高齢者介護、地方に根付いた因習。
どれもやや暗鬱とし、目を逸らしたくなるようなエッセンスを兼ね備えながらも、それをありありと描写し、それでいて読者の興味を引くことができる筆致というのは、容易ではないと思います。

そして、タイトルの『カッコウの巣』。
托卵という独特な習性を持ったこの鳥を引用した意味は明らかになり、最後に、まさにこのタイトルしかない、と唸らせるほどの、言い得て妙なセンスに感銘を受けています。

カクヨムでは珍しい、重厚な社会派ヒューマンドラマとも言えるのではないでしょうか?
ぜひご一読下さい!

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