夢と現、生者と死者、地方と都会、持つ者と持たざる者。
……見るものと、見られる者。見た者と見えぬ者。
因習といえばホラーでは舞台装置の歯車として扱われるパターンが多い。
されど、昔から途絶えることなく紡がれる郷土たる歴史であるのを忘れてはならない。
続けるのには意味があり、語られるのには理由がある。
この作品の特徴は、郷土の歴史、そこに住まう人々の日々の生活、その文化を下地にして、しっかりと展開させていく点である。
地方にありがちな固守めいた価値観、持つもの、持たざるものの違い。
怪異とは何か、何故死ぬ、殺されるのか。
そも怪異とは、未知なるもの、死や恐怖などの負の側面を、概念たる形で作ったもの。
何故いるのか、ではなく、人間がいるからで落としこんでいるのが、また恐ろしい。
とある街で、民俗学のフィールドワークを行う際に、次々に関係者が襲われる。
短期間で白骨化した知人の死体に、巨大な目玉が宙を漂うという悪夢を複数の人が見るという怪奇現象の数々。
ルポルタージュ風な筆致は非常に硬派。それがかえって、恐怖、まとわりつく不気味さ、おどろおどろしさを如実に表現した見事な作品です。
集団で魘される悪夢の正体、巨大な目玉の怪異は一体何なのか。
なぜ、関係者は襲われ、命を落とす羽目になったのか。
そして、その危険は主人公の身にも……!?
主人公による取材や考察にあっと驚かされるでしょう。
この作品を書くには、作者様自身の相当な知識と取材が伴っていたものと推察されます。
文句なしの★★★! 超大作をぜひ味わってください!