リズミカルなフラッシュは命の躍動、そして涼子へ。

脚本の用語で、フラッシュとは回想シーン挿入を差しますが、本作品における戦地を巡るフラッシュには、トトトトトという銃声が聞こえてきそうなほどの臨場感を覚えます。

映像、臭い、感触、温度……。

地球の歴史、人類の歴史、国の歴史、個人の歴史。

涼子の名前の由来や、ひいては涼子の個性も含めて、まもなく散りゆく一人の男の人生と哲学、漢気が、五千文字たらずの短編でまっすぐに飛び込んできます。「勝男」という名前を選ばれたのは、おそらく感性による直観だろうと思いますが、こちらもこれ以外ないだろうと腑に落ちます。

時代だったと言えば、それまでですが、そこには同じ出来事が千あったとしても、ここに生きて、死にゆくのは一人の男。

涼子から始まる効果的な冒頭のシーン。
構成として勝男が主人公になっていますが、現代の涼子を際立たせるつくりにしたならばどうなるのか、そちらもぜひ拝読してみたいと思いました。

神視点の語りは、深いやさしさとユーモアを持つ、文鳥亮その人であると感じられる。彼(もしくは彼女)のカメラワークが堪能できる、一篇の心打つドラマです。映像で観たいです。

素敵な作品をありがとうございました。

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