なぜ?どうして?を追って踏み込み、怖さと切なさに心が揺れる

人でごった返している駅構内。陣は突如、奇妙な空間に引き込まれる。場所は元いた駅のままなのに、自分以外の一切の人間が消え失せ、様々なおかしなことが起きる……そんな体験と既視感、違和感を繰り返し、明らかになるのは――

ストーリーすべてが伏線です。バラバラに提示されるパズルのピースは、ひとつずつ確実に、読者に手渡されます。それが一体どう繋がって、どんな全体像になるのか?
たとえ何かひとつを推測できても、なぜ?どうして?と新たな疑問が生まれる情報の出し方が巧みです。常に先が気になり、夢中でグイグイ読み進めちゃいました!

ホラー的な演出も魅力的です。それはグロテスクな恐怖だったり、追われる緊張感だったりするのですが、同時にエンタメ性も感じました。臨場感があって、自分自身が体験したような気持ちを味わうこともできました。
私は特にアミューズメントパークでの悪夢のような不気味さが好きです。

怖さばかりではなく、予備動作のない笑いが飛んでくるところも魅力です。構える暇がなく、良い意味で取り残されるのですが、それが面白く、飛んできたものを改めて受け止め、また笑えます。

人間はそれぞれ思いを抱えている。物語が進むほどにそのことに気づかされ、心揺らされます。強い思いは何かと交差した時だけでなく、ただそこにあるだけでもドラマを生じさせます。

終盤に差し掛かった物語はどんなラストを迎えるのか。とても楽しみです!

※「帰郷」までを読んでのレビューです。

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