美しい文章から情景が目に浮かんでくる切ない怪奇幻想。

 美麗な森の風景や古めかしい建物などの情景描写も見事でしたが、〝本〟と化している少年という、怪奇且つ幻想的な設定と、その姿態の耽美的な描写が、文章として一際美しく映えていたと思います。
 そこに少年の出会いと友情、本——所有物と認知されている歪んだ親子愛、逃れられなかった別れと最後に残ったもの。それらの要素が美しく組み合わされた、上質な怪奇幻想だというように感じました。
 見方を変えれば人体変異ホラーSFとしての側面もありますが、織り成す文章の美しさからすれば、これは怪奇幻想文学として成り立つに相応しい作品なのだと思います。

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