孤独に倒れて、汚物に塗れて、絶望に襲われて、垣間見たものは―――。

 作品に唯一つけられているタグである〝孤独〟。それをどれだけ経験しているかで読み方が変わると思うのですが、個人的にはかなり共感性の高い作品でした。
 しかし、その共感すらも無意味に思わせるテーマと、最後の一文。誰しもが孤独を抱えて生きている同類のはずなのに、壁一枚、扉一枚隔てた社会という森の中で独りの人間が倒れても、誰も気が付かず、音は聴こえない。
 孤独に倒れ、汚物に塗れ、絶望に襲われた作者は、走馬灯めいた幻影の中で過去のノスタルジーに誘われて起き上がったが、音も無く倒れたまま朽ちていった木は、世界にどれだけいただろうか。
 共感などしても無意味だ、と言われているような諦観めいたシニカルさを感じますが、それでも、その主観に共感せざるを得ない作品でした。だとすれば、私小説として、とても味わいのあるものなのだと思います。
 孤独を抱えている木の中の独りとして、この文章を寄せました。応援しています。