逃げ場のない少女が抱える心の闇と、世界への反撃。そして、同じ穴の狢。

 狢=ムジナというのは主にアナグマのことを指すが、時代や地方によってはタヌキ、ハクビシンなどのことも指す。ようするに、格好の似た獣を一括りにして大雑把に呼称していたわけだが、今作には、そんな狢の中の一角、タヌキが登場する。少女の呪詛を受け入れる地蔵が祀られている神社の名称の中に。
 主人公の少女、なつきは家庭にも学校にも逃げ場がなく、頼れる立場にいるべき大人たちは、誰もかれも下衆な者ばかり。血の繋がった母親ですら。
 そんな孤独な少女が頼った――頼らざるを得なかったのは、近所にあった狸穴神社の縁切り地蔵。爪や髪を供物に、なつきは自分を虐げた者たちへ呪いをかけていくが……。
 その結末は悍ましく、同情していた読み手を突き放すようなラストには拍手を送りたくなった。しかし、それは同時になつきが闇に堕ちていくことを指している。さながら、自分を虐げてきた者たちの側へ。そのさらに深部へと。
 まさに、同じ穴の狢となってしまうのだ。狸穴神社の縁切り地蔵の呪力によって。
 個人的には爽快感を感じる物語ですが、その味わいは何とも厭味のあるものです。しかし、ホラーとはそうあるべきものだと信じています。お勧めです。

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