闇に浮かぶ、鮮烈で凄艶なイメージ。文章でしか表現できない強烈な「絵」

普段レビューコメントはネタバレで書かないんですが、本作に関してはネタバレに触れずに凄さを語るのが困難と思われたので、ネタバレチェック入れました。
というわけで、以降の文章は本作の激烈なネタバレです。ご留意のほど。






本作、「息子の背中の皮を剥ぐ父親」の像があまりに鮮烈すぎました。
描写の端々から性的虐待の匂いが漂う(あくまで雰囲気であって行為そのものはない)ためでしょうか、闇に浮かぶ息子と父の姿には強烈な痛々しさと背徳的な艶とが強くまといついていました。
そして、「剥がれた背に浮かぶ文字」のイメージ……これ、実際に映像で描き出すと耳なし芳一的な不気味さが漂ってくると思うのですが、「背徳的な美しさを湛えた何か」に感じられるのは文章媒体ならではだと思います。映像を伴わないイメージだからこその純度、といいますか。
そして、陰鬱な生々しさをまとったイメージが、最後に白く浄化される感じもまた美しい。
文章でしか描けない「絵」というものはあるのだと、本作を読んでいると感じられるように思います。

ありがとうございました。

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