再演専門の映画館ってたまらないよね…!と思う方は迷わず開いてみてください。
場末の映画館のレイトショー、「僕」の隣で観るのは地縛霊のくじらちゃん。
くじらちゃんは女子高生で、唯一残る生前の記憶は、スクリーンいっぱいに映った鯨――
そんな謎めいた彼女を主人公に、その真相を探るモキュメンタリーを撮ることを思いつく「僕」、圭一。
そこに「レンタル霊媒師」を名乗る食えない男、円さんと出会い、物語は動き出しそして衝撃の事実へと収束してゆきます。
まるで映画館と一体となったような幻想的で迫力ある映像表現、切ない思い、不思議な友情。
亡霊とは怨嗟だけでなく、思い残したい姿、願いの一端でもあるのかもしれません。
主人公の圭一くんと霊媒師の円さんが、バディとなって解き明かしていくミステリーともなっていて、阿鼻叫喚なホラーが苦手な方にもおすすめです。
写真が魂を抜くのなら、このフィルムは――?
この“モキュメンタリー”をぜひ追って、一緒に「くじらちゃん……!」と叫びましょう。
場末の映画館にいる地縛霊少女の謎を解き明かそうと、男主人公と、自称レンタル霊媒師の怪しい男のふたりが活躍する物語――
概略としてはそのような感じになりますが、本作の魅力はそれにとどまりません。
ミステリーとしての謎解きの魅力、ホラーとしての怪異描写の魅力、そして謎の主軸に関わってくる家族愛の魅力……などなど、多岐にわたる要素ががっつり噛み合って、上質の読後感を生み出しています。
物語は当初、主人公ふたりがそれぞれの謎を追う形で進んでいきます。
当初無関係に見えたふたつの謎は、途中で思いもよらない形で繋がり合……うまでなら、比較的よくある話です。
しかし本作は、その後にも新たな驚きが続いていきます。最後まで目が離せません。
怪異については、どぎつい描写こそないものの「この世ならざるもの」「見えざるもの」の感触が鮮やかに伝わってきます。
現実に存在しない感覚を描いた文章が好きなので、個人的にはとてもツボにはまる描写具合でした。
そして家族愛については……あまり詳細に語るとネタバレになるので簡潔に。
複雑な人間関係の中、過酷な環境下で、縁ある相手を想う人々が数多く登場します。
家族にまつわる愛情の物語が好きな方には、刺さると思います。
もともとブロマンス・バディ要素に引き寄せられて読みに来たのですが、それ以上に本筋の完成度に圧倒されました。
とはいえ主人公ふたりの関係性――相手を鬱陶しく思いつつも断ち切れない絶妙な距離感や、軽快なやりとりもとても絶品でした!
各方面に色々な要素が楽しめる、贅沢な作品だと思います。
ひょんなことから出会った霊媒師と共に、地縛霊(たち?)の謎を解き明かしていくホラミス・ブロマンス・バディ小説です。
いろいろ詰め込みましたが、全部わたしの好きなやつなのですよね。どんぴしゃ!
映画館に居つく女子高生地縛霊くじらちゃんと友達になった圭一は、彼女をモデルとした映画製作に取り組むことに。それをきっかけに出会ったレンタル霊媒師の円になぜか見込まれ、彼の探し物にまで付き合う羽目になる。そこから事態は思わぬ方向に動き出していきます。
主人公の圭一くん、一見すると地味な普通のフリーター青年です。一方レンタル霊媒師という怪しげな職業の円さんは、豪胆さと強引さとを兼ね備えたかなりのクセ強キャラ…なんですけど。
読むうちにあら不思議。クセ強に引っ張られたものか、天性のものか。圭一くんの思い切りの良さが、そこかしこに現れ始めてくるじゃありませんか。好きです、こういう主人公。カッコいいよね。
物語は円さんの探し物や、地縛霊くじらちゃんの秘密までを巧妙に絡ませて展開されていきます。ジャンルはホラーですが、ミステリーとしてもたっぷり味わえるのも魅力。怖さを強調したストーリーではないので、ホラーが苦手な方にもおすすめです!
カクヨム読者として最大の運命の出会いがこの作品です。「出会えてよかった」の一言に尽きます。推し作品です。
巧みなストーリー構成、魅力的なキャラクター、徐々に明らかになっていく謎に惹き込まれること間違いなし!
幅広い層に刺さる作品だと思います。どうか騙されたと思って読んでください。
軽くあらすじを紹介します。
古い映画のみを上映する映画館「モナリ座」三番シアターの地縛霊であるくじらちゃんと、主人公の折戸圭一は映画友達です。
そんなくじらちゃんが幽霊になる前の唯一の記憶は、「スクリーンいっぱいに映った鯨」。
圭一は、くじらちゃんが生前どんな人であったのか、どんな一生を送ったのか、そしてどうして死んだのかを探ろうとします。
そんな中で出会うのが芦峯円というレンタル霊媒師です。
レンタル霊媒師という時点でキャラが濃いですが、彼は映画館を所有している森岡家最大の恥とも言われており、勘当されています(何故そうなっているのかは本編でご確認ください)。
圭一は円に探し物を手伝って欲しいと頼まれます。その探し物はなんと、円の母親の遺骨でした。
・モナリ座にいるくじらちゃん
・円の家庭事情
↑この一見関わりのなさそうな二つの謎が、後半に近付くにつれ全て繋がっていきます。
三番シアターの亡霊の秘密を知った時、鳥肌と涙が止まらなくなることでしょう。
謎が徐々に解き明かされていく時の「そうだったのか」感が素晴らしいです。
読み終わった後はそれこそ映画を見た後のような満足感、余韻に浸れます。
私はこの作品を紙で読みたい。あわよくば書籍版で新たなおまけエピソード加筆とかされてほしい(強欲)
どこかの編集部さま、どうかよろしくお願いします(強い念)