かっちりはまるパズルピースの快感。入り組んだ真相の果て、見える数多の愛
- ★★★ Excellent!!!
場末の映画館にいる地縛霊少女の謎を解き明かそうと、男主人公と、自称レンタル霊媒師の怪しい男のふたりが活躍する物語――
概略としてはそのような感じになりますが、本作の魅力はそれにとどまりません。
ミステリーとしての謎解きの魅力、ホラーとしての怪異描写の魅力、そして謎の主軸に関わってくる家族愛の魅力……などなど、多岐にわたる要素ががっつり噛み合って、上質の読後感を生み出しています。
物語は当初、主人公ふたりがそれぞれの謎を追う形で進んでいきます。
当初無関係に見えたふたつの謎は、途中で思いもよらない形で繋がり合……うまでなら、比較的よくある話です。
しかし本作は、その後にも新たな驚きが続いていきます。最後まで目が離せません。
怪異については、どぎつい描写こそないものの「この世ならざるもの」「見えざるもの」の感触が鮮やかに伝わってきます。
現実に存在しない感覚を描いた文章が好きなので、個人的にはとてもツボにはまる描写具合でした。
そして家族愛については……あまり詳細に語るとネタバレになるので簡潔に。
複雑な人間関係の中、過酷な環境下で、縁ある相手を想う人々が数多く登場します。
家族にまつわる愛情の物語が好きな方には、刺さると思います。
もともとブロマンス・バディ要素に引き寄せられて読みに来たのですが、それ以上に本筋の完成度に圧倒されました。
とはいえ主人公ふたりの関係性――相手を鬱陶しく思いつつも断ち切れない絶妙な距離感や、軽快なやりとりもとても絶品でした!
各方面に色々な要素が楽しめる、贅沢な作品だと思います。