第14話 「夢見がちなリアリスト」

 春が近づいてきて、また新しい節目を迎えるね。


 一昔前、子供の「なりたい職業ランキング」なんかはサッカー選手とか歌手とか、そんなのが当たり前のように入っていたけど、今の一位はなんと「国家公務員」なんだね。うーん、思うところがないわけでもないけど、世の中を見ると仕方ない側面もあるね。大きな夢を見るほどの余裕なんてないって事だよ、子供にすらね。


 そうは言いつつ、子どもたちは子どもたちで内心では「ああもなりたい、こうもなりたい」なんて夢もまた広がってるんだと思う。

 言うならば「夢見がちなリアリスト」ってとこかな。


 でも「夢見がちなリアリスト」ってのは悪い事じゃない。たどり着けないかもしれない景色を求めながらも足元をしっかりと確かめて、進める道を進むって事だから。


 私が書いた「ウェブ小説に狂った男」の六地蔵リクオなんかは、文学青年で作家になる事を夢見て、新人賞なんかに応募しまくるけど全く相手にされず、まだ現実的な判断能力を有していた頃に作家になる道を諦める。その時点の六地蔵リクオは「夢見がちなリアリスト」といえるね。


 でも、面白くもない仕事と寝るだけの毎日を送る中で、ウェブ小説に出会って小説への思いが再燃してしまって、どんどん依存していってしまう。狂ったように小説を書きまくるけど読んでもらえずに、異常なほどのプライドの高さが邪魔して「趣味で書いておりますのでPVや評価は気にしていないのですね」とアナウンスするんだけど同時に宣伝や自作の解説までしてしまう。そして、そんな自分を肯定するめに「アマチュアは好きに書くんじゃああ!好きを詰め込むんじゃああ!」と叫びながら「夢の世界に住み続ける狂人」になってしまう。


 今の子供たちには、夢と現実のバランスをうまく取りながら、自分が最大限に幸福になれる道を辿っていけるようになってほしいね。間違っても「夢の世界に住み続ける狂人」のようにだけはならないでね。

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