第15話 リクオとサタンビッチの甘々生活

 同窓会なんかでさ、あまりに様変わりしてて誰だかわかんないって事がたまにあるけど、それは男より女の方が圧倒的に多いね。

 地味だった子が華やかに、ヤンキーだった子がおしとやかに、なんて事は珍しくもない。やっぱりメイクと髪型で、女は男に比べて変身しやすいからね。


 変身した子が昔の自分をどう捉えてるのかは、ほんと人それぞれだろね。恥ずかしく懐かしく想ってたり、あれはあれで良かったって想ってたり、あるいは消し去ってしまいたいと想ってたり。


 ただ、人間、性根はちょっとやそっとじゃ変わらない。クソヤンキーだった子が、おしとやかになってても性根はやっぱりクソヤンキーだったりする事は往々にしてある。いい暮らしができる男と結婚するために変身して、いざ結婚できたら月日とともに徐々に正体を現してくって事が現実にも腐るほどあるもんね。


 そんな事を思った時に、「ウェブ小説に狂った男」の六地蔵リクオとサタンビッチの想像が頭の中に広がったよ。


 リクオにとってサタンビッチだったヤンキー少女は大人になって、なんらかの事情で自分の意のままになる男を必要としてる。かつてのヤンキー少女は別人のように変身を遂げてる。どこかに恋愛なんてロクにした事がなく、初めての恋愛に何もかもをなげうって依存してしまうバカな男はいないかと探してる。

 そんな折、街でリクオを見かける。かつて「キモアイ」と呼び、イビリ倒した頃からリクオは何も変わっていない。相変わらずキモキモオーラを全身に身にまとい、うつむきながら何かブツブツ言って歩いてる。

 見つけた!最高の生贄を見つけた! リクオは絶対に私の事はわからない。でも念の為に、それを探りながら落とし込んでいこう。

 リクオに駆け寄って、困り顔で声をかけた。

「あの、すいません…」

 リクオが振り向いた――。


 リクオは落ちた、あっけなく落ちた、想像力が欠如した自己評価だけが高いクソバカだから、いともたやすく落ちた。2ヶ月も経たぬうちに同棲生活を始めるまでにこぎつけた。

 キモアイ具合を増した「おっさんキモアイ」と同棲するのは、精神を病みそうになるほど苦痛だったが、目的を果たすためには仕方ない。依存と洗脳を深めるために周囲と隔離する必要がある。そう思って歯を食いしばって耐えた。リクオはもう自分なしではいられない、完全に依存してる。もう少し、もう少しだ、耐えろ、そう自分に言い聞かせた。


 そんな事を何も知らないリクオは同棲する部屋に一人でいる時、誰にも読まれない自己満小説を書きながら、雄叫びをあげた。

 

「ヒャッハーーー! 甘々生活なのですね! ラブラブの甘々生活なのですね! 私には、いつかこういう甘々ライフが待っていると思っていたのですね! マイハニーはサタンビッチの100万倍可愛いんじゃああっ!」

 

 そんな妄想に、爆笑してしまったよ。

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