第12話 六地蔵リクオにならないための方策

 自分の書いた小説にコメントをもらえるのはすごくうれしいね。しかもそれが、こんな風に捉えてもらえたらいいなと思った事が果たせた時は、もう本当にうれしい。

 私は「ウェブ小説に狂った男」で六地蔵リクオという男を書いたけど、それは「承認欲求を好きなように暴走させてたら、最後にはこんな男みたいになっちゃうよ」という警鐘を鳴らすためだった。


 小説を読まれたくて仕方がなくて、宣伝や解説までしまくるんだけど、絶望的に読んでもらえなくて「趣味で書いておりますのでPVや評価は気にならないのですね」と自分を守るアナウンスをしながら、「アマチュアは好きに書くんじゃああ!好きを詰め込むんじゃああ!」と叫び、自分の小説を顧みることはないまま狂っていく男ね。


 この小説を読んでくれた人に恐怖を感じてもらって、こんなふうにだけは絶対になりたくない……って反面教師にしてもらえたらいいなと思いながら書いたんだけど、正にそんな感想をこれまでたくさんもらって、本当に満たされた。


 で、逆に六地蔵リクオにならないためにどうすればいいのかという事に関しては「WEB小説で驚いた事」というエッセイに書いたんだけど、最近特に感じる事に関して少しだけ書こうと思う。


 どうも、文字数を甘く見てる人が多いように思う。前にも書いた事なんだけどある作家さんが「原稿用紙100枚の世界を大切にしている。100枚でかなりの事が書ける。400枚ならもう相当の事が書ける」って。100枚で4万字、400枚で16万字。プロの売れっ子作家がそう語るのは、文章の重みを知り尽くしてるからだろうね。逆にいうと「16万字の小説なんて、そうそう書けるもんじゃないよ」と教えてくれてるようにも思う。そして私は正にそう思う。人に読んでもらえる、人が読むに足る、16万字の小説という意味においてだけどね。


 私が書いた六地蔵リクオは作中で、10万字、20万字どころか、50万字の小説すら量産する。それはなぜかというと「アマチュアは好きに書くんじゃああ!」で「私はこれが好きなのですね、こういう世界がたまらないのですね」と、自分の好きな事を好きなように、ただ書き殴ってるから。だから文字数だけが際限なく、どんどん増えていく。それが自己満足のためだけなら救われるんだけど、人に読んでもらいたい、人に評価してもらいたい、という強烈な承認欲求を併せ持つものだから目も当てられない。そこに生まれるのは、更新の度に延々と一桁PVが並ぶという現実。


 もしも、そんな感じの事で悩んでる人がいたら小説を書き上げた後、「こんなにも長いのを書けた!」って悦に入るんじゃなくて、一度「こんなに長くなってしまった……。この文字数に値する内容を書けてるかな」って自分に問いかけてみたら何かが変わってくるかもしれないね。

 でも「アマチュアは好きに書くんじゃああ!好きを詰め込むんじゃああ!」って人は、これからも好きなだけその姿勢を貫いてね。承認欲求が満たされる事はないだろうけど、誰一人として困らないからね。自由だよ、自由。

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