第12話 大輝殺害犯! 




 ある日、大輝(ジョセフ)の妻美咲と愛人山中課長、更にはアメリカ人妻ジュリアの元に、奇妙な電話が入った。自分の音声を変えることが出来る、スマホ専用ボイスチェンジャーで電話が入ったのだ。


「夫の身であるジョセフが、妻以外の女性複数と付き合っている。更には法律で罰せられた重婚である」

 そんな何とも奇怪な電話が3人の元に入った。


 そして麗子の姿は忽然と消えていた。犯人は一体誰なのか?

 麗子がジョセフが離婚してくれない事に業を煮やして、こんな新手の手段に出たのか?


 更には何とも恐ろしい事件が起きた。実は…ジョセフが殺害されてしまった。


 それでは……ジョセフ殺害犯は一体誰なのか?


     ◇◇

 

 慶高学院では有名バイオリニスト兼作曲家美咲の夫が、殺害された事によって大騒ぎとなった。


 更には女王様に君臨していた警視総監夫人麗子が姿を消した事によって、ママカ-スト制度は新たな局面を迎えていた。そして…新たなる頂点に君臨したのは何と天才児優馬君ママで、引く手あまたの東大卒の研究員三穂だった。 



 Ⅾクラスはサラリーマン家庭の巣窟。奥様達も専業主婦に甘んじている一般人ばかり。そこに来て東大卒の才女で東大研究員の地位にある三穂が、カ-ストの頂点に君臨する事は至極当然の事。更にはあんなに賢い天才児優馬君のママ、誰も一言も反論できない。


 こうして新たなるママカ-スト制度が出来上がって行った。


     ◇◇

 実は…Bクラスの有名バイオリニスト兼作曲家美咲の夫が殺害された事件で、どうも……ママカ-ストのてっぺんに君臨する麗子様が、犯人らしいと言う情報がまことしやかに流れた事によって、新ママカ-スト最上位となった三穂が口火を切った。

 

「皆様どうお思いかしら?栄えある我が校の名を汚す行為をした麗子様を許すことが出来ますか?」


 それでは……何故こんな大ごとになってしまったのか?本来だったら幾ら同学年の生徒のお父様が殺害されたと言えどもクラスが違う。ましてや主だった行事以外は全く接点のないBクラスの事で、Ⅾクラスのママ友が頻繫に集まるなど全くもって理解出来ない。


 それも東大卒の才女で東大研究員の地位にある三穂が、ワザワザ時間を割いてまで頻繫に会合を持つなどあり得ない話なのだが?


 そこには一体何が有ったと言うのか?


 


 その発端はネイルサロン経営者樹々によってもたらされた。

 麗子様が行方不明になった事で真っ先に動いたのが誰あろうネイルサロン【アトリエJUJU】を経営している樹々だった。そして…早速新女王三穂に情報が伝えられた。


「もしもし三穂さん?【アトリエJUJU】の樹々です。わたくしね。実は…どうしてもBクラスの、さくらちゃんのお父さん殺害の件でお伝えしたい事がございますの。一度会って頂けないかしら?」


 こうして…忙しいキャリアウーマン2人では有ったが、ランチがてら秘密の話なので個室のあるレストランでの会食となった。


「三穂さんごめんなさいね。お呼び立て致しまして……実はですね。麗子さんは殺害されたさくらちゃんのお父さんと不倫関係にあったのです。そこで……わたくし見てしまったのです。さくらちゃんママと麗子様が争っているところを……」


「一体どんな事を言って争っていたのですか?」


「それがですね……ある日ジョセフが私に頼み込んで来た事が有ったのです。それは別荘を数日間貸してほしいという事だったのです。私は……軽井沢に忙しい私や息子更には従業員たちの労をねぎらう為に、保養所兼別荘を所有しております。ジョセフとは職場が同じショッピングモ-ルにあることで親しくさせて貰っています。そんな理由からアメリカの両親がやって来るので、蒸し暑い東京では折角の旅行も台無しと言うのでお貸ししたのです。だが私は……たまたま軽井沢に行かなければならない用事が出来て、急遽軽井沢に出掛けました。折角やって来たので別荘に顔を出した時に、アメリカの両親はいらっしゃらなくて、その代わりにあの有名作曲家兼バイオリニストの美咲さんと麗子様、更にはジョセフの3人が、まさにそれこそ……凄い剣幕で外まで聞こえる大声で喧嘩の最中だったのです。その話はズバリ!ジョセフと麗子様の不倫だったのです」

 

 ジョセフは度々樹々から別荘を借りていた。それは当然麗子との逢引き目的なのだが、樹々は最初はそんな不潔な行為が行われていようとは知らなかった。


 実は…樹々とジョセフは麗子と関係を持つ以前から男女関係にあった。だから樹々にすれば都合のいい時だけ会ってくれ愛してくれるジョセフに不満タラタラ。だが、別荘に行けば絶対に会えるので、喜び勇んで別荘引き渡しの日には必ず別荘に顔を出していた。


 そして…麗子の夫の知る所となったのは言うまでもないが、ジョセフの妻美咲も気付いていた。3人が言い争っていたのは事件の1カ月前の事である。樹々にすれば強敵はこの2人である。美しい麗子と才能満ち溢れる美咲はまさに目の上のたんこぶ。



 こうしてママ友たちの犯人探しが始まった。



     ◇◇


「今日はお集まりいただきありがとうございます。ところで皆様は犯人は誰だとお思いかしら?先ずは私の良きパ-トナ-で理解者でもある樹々さんに、事件のあらましを話して頂きます」


「実は…事件の発端は、麗子様とBクラスのさくらちゃんのお父さんとの不倫が原因であると考えられます。そこであの有名作曲家兼バイオリニストの美咲さんに不倫現場を目撃されて事件は発生したと考えられます」


「エエ————————ッ❕あの麗子様とも有ろうお方が、我々下々の者の見本とも有ろう、あの日本トップ警視総監様の奥様とも有ろうお方がフッ不倫ですと———ッ!更には殺害……」


「皆様お静かに!お静かに!ハッキリ分かりもしない事を、軽々しく麗子さんを犯人呼ばわりしないで下さい。麗子さんは以前は私の【アトリエJUJU】に3週間に一度必ず来店されていたのに、ピタリと来られなくなりました。お電話を差し上げてもなしのつぶて、もうかれこれ2ヶ月連絡が付きません」


「という事は、2ヶ月前にさくらちゃんのお父様が亡くなった直後から、麗子さまも居なくなったという事ですね?という事は、やはり……殺害犯人は麗子様という事?」


「多恵さんあなた最初からそうでしたが、何でも早急過ぎます。そんな風だからご主人様が……あっ失礼!ゴホン」

 

 副リ-ダ-各だった多恵のポジションには【アトリエJUJU】オ-ナ-の樹々が就いていた。実は…多恵の夫が6大学の准教授という噓はとっくにバレてしまっていた。「人の口には戸は立てられぬ」とはよく言ったものだ。そして…三穂たっての希望で樹々が副リ-ダ-におさまった。


 こうして三穂という最大の新リ-ダ-を筆頭に、事実上の副リ-ダ-樹々、更に他の総勢5人で真実を突き止めるべく犯人探しが始まった。


 

     ◇◇


 最初樹々さんから不倫の話を聞いた時は絶対に麗子様を犯人だと疑い、許せない気持ちで一杯だった三穂。


 だが、ある日息子から懇願された。実は…あんなに仲の悪かった天才児優馬君と大和君だったが、最近は良きライバルでもあり、友達として公私に渡り一番の理解者でもあった大和君が、母麗子の後を追うように2か月間学校を休学してしまった事に、端を発しての会合となって行った。


 そして…犯人探しが根本から変わり始めて行った。

 

 大和君は大親友優馬君に会った日を最後に姿を消した。

 それも、意味深な言葉を残して姿を消した。


「ママは絶対犯人ではない!証拠が……証拠がある!」

 そう言い残して姿を消した。


 犯人は一体誰なのか?三穂は1人息子優馬から強く懇願されていた。

 大親友大和君の無念を晴らすようにと………。


 こうして…息子の為に一肌脱ごうと、仕事が有りながら時間を割いてママ友たちと犯人探しに取り組む事になった。





 










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