第5話 強敵理恵


「お前!またエルメスバーキンのバック300万円で購入しただろう?ちゃんと相談してから買ってくれよ。全く―ッ!」


「それでも…私にもご褒美が欲しくてよ」


「まったくこの金食い虫が!」


「酷い言い方ね。私だって子供のために毎日必死だから」


 このような状況で隆は益々愛人で、キャリアの警視庁に勤務する30歳の警視理恵に傾倒している。自立して自分の足で着実にキャリアを積み上げている理恵にはつくづく感心する。更には両親にも多少だが仕送りをしている質素で堅実な理恵には頭が下がる思いだ。


 それに引き換え世間体ばかり気にする見栄っ張りで、傲慢な女王様気取りの麗子にはつくづく嫌気がさしている。今日も仕事終わりと同時に隆が仕事で使うために借りたマンションにやって来た理恵。


 理恵と隆の年齢差は28歳差で、麗子と隆の年齢差は20歳差だ。


 隆は仕事人間で仕事に打ち込むあまりに、婚期が遅れて40歳で麗子と結婚した。麗子はその時20歳だった。


 評判の美人が居るとは聞いていたが、仕事にかまけてそれ所では無かったが、警察官同期とは入庁後も親交が続いていた。そんな時同じ部所の部下で美人麗子を飲み会の場に連れて来たのが、麗子との最初の出会いだった。余りの美しさに舞い上がり強引に結婚にこぎつけたのだった。


 だが、虚栄心の塊の金喰い虫など分かろう筈も無く結婚した。一方の麗子にすれば若い同僚からも引く手あまたの美人さんだったが、例え20歳差であろうが将来を嘱望された高収入の隆を選んだ。


 一方の理恵は東大卒のキャリア警察官だが、こんな父親と同年代の男に近付いたのには訳があった。実は愛知県出身の彼女は父親の出身地がB地区にあり、幼い頃に名古屋市天白区に移住していた。

 

 当然現在はそのような差別は無くなったと言えども、調べればわかって来る。だから結婚には期待しないで、自分自身が上り詰める事だけを考えて生きている少女だった。


 だから…普通の子供達と違い「どんな事をしても!」という強い気持ちがいつも頭をもたげていた。こうして…女一人で生きて行くためには、何が何でも出世しなければと思い隆に近付いた。また、理恵はかなりの美人でもあったので運良くお近づきになれた。


 これではいくら天下の美女と歌われた元警視庁一の美人麗子でも、年齢的にも能力的にも太刀打ちできない。


 こうして…鉄の意志を持つ理恵は、その甲斐ありお近づきになる事に成功した。


 それでは、どのようにして警視総監とも有ろうトップと御近づきになれたのか?


 


 出会いは意外なものだった。それは年末の特別警戒のため、まだその時は副総監だったが、年末の歌舞伎町に警察官を引き連れ視察に出掛けた時に、警視だった理恵も動員された。それは年明けの3日まで行われた。


 副総監の隆はそのうちの5回視察に出掛けた。当然警察官たちも理恵も動員されていた。

 そこで年越しという事もあって労をねぎらう為にも、打ち上げと称して居酒屋で、軽く飲み会が行われた。当然男衆は年越しという事も有って酒を煽りたい。だが、打ち上げの中盤に差し掛かった頃、副総監隆に緊急の電話が入った。男衆は酒を飲んでいるので当然送れない。


 年末という事も有りタクシーも中々来てくれない。副総監隆もイラつきを隠せない。そこで理恵が飲み会の席で言い放った。


「お急ぎでしたら車出しましょうか?」


 男性警察官たちはお酒を飲んでいるので、副総監様を送ることが出来なかったので、理恵が副総監隆をお送りした事から一気に距離は縮まった。


 理恵も緊張して話すことが出来なかったが、このチャンスを逃したらもうチャンスは巡ってこない。そう思い話し出した。


「副総監様ご気分は如何ですか、視察でお疲れでしょう」

 このような話から徐々にほぐれて隆から重要な話を聞き出す事に成功した。


「警視総監というポジションに着く事になるので、別にマンションを借りる事になった」


「おめでとうございます!お手伝いに上がります」


「何を言っているんだね。仕事で疲れているのに……」


「こんな図々しい事を言っては誠に恐縮ですが、マンション教えて頂けませんか?」


「嗚呼……いいよ」

 ことのほか簡単に住所をゲット出来た。こうして…引っ越しの日に駆け付けたが、

 他にも誰かもいるに違いないと思ったが、意外や意外誰も来なかった。家具一式付きマンションなので2時間ほどで終わった。


 その後2人は近くのレストランで昼食を取った。

      


     ◇◇


 やがて…押しかけ女房同然で度々マンションに顔を出す様になった理恵。そんなある日の事だ。


「警視総監様今日泊って行っても良いですか?」


「ダメだよ。大切な娘さんを預かっている身の上だ。それに私には妻と子供がいる」


「私は……私は……結婚なんか……結婚なんか……望みません」

 そして…そっと抱き付いた。



     ◇◇


「今日も隆は帰って来ないわね。大和……ママチョッとマンションに顔を出してくるね。パパも立て続けに帰って来ないとは?仕事部屋だから顔を出すなとは言われているけど……ちょっと心配だからお手伝いさんと待っていてね」


 夜の東京を車で走り抜けた。そしてマンションの部屋の鍵を開けた。


「あら~?誰もいない。まだ……帰っていないのかしら?」

 帰ろうとした時に微かに声が……喘ぎ声……?


 そう思い寝室のドアを開けた。

 そこには隆と理恵がベッドで重なり合っていた。


「嗚呼……なんて事……なんて事を……」

 泣き伏す麗子。



 

 更にはこの物語の主人公である美咲と大輝の娘さくらも、慶高学院の2年生である。クラスこそ違ってBクラス(才能あふれる人材を育成するクラス)であるが、アパレルメーカー社長大輝の真実が徐々に浮き彫りになる。


 それは……この慶高学院から徐々に暴かれる事に……。









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