第4話 殺人者?
天才児山下君の父親は大手不動産会社に勤務するサラリ―マン。そして…母親の三穂は東大卒の才女だが、実は…絶対に知られたくない秘密が有った。
それは……母三穂の兄が殺人者だという事。実は兄は妻を心から愛していたが…最近妙に怪しい行動の妻。そこで、妻の行動に不信を感じた兄が跡を付けるととんでもない事実が判明した。
妻は何食わぬ顔で仕事関係の男のマンションに消えた。最初は仕事で致し方ないと思っていたが、ある日とうとう妻の不倫現場を目撃してしまった。カ――ッ!となった兄は咄嗟に妻の首を絞めて殺害してしまった。
こんな事情もあり東大卒の才女でありながら、夫は格下の中堅不動産会社営業マンで、凡人を選ばざるを得なくなってしまった三穂。
そんな事実を掴んだママカ-スト最上位の麗子様は、長男誠の絶対知られたくない真実を全て優馬君に知られてしまったので、この情報を盾に口封じをしようと考えている。そこで優馬君ママも誕生会に招待したのだった。
殺人なんてもっての外、この事実は絶対に知られたくない事実だ。山下夫婦はひた隠しにしているが、遂にバレる時が来た。
それは……ある日の事だ。早速ママカ-スト最上位の麗子様からのお誕生会のお誘いの電話が、Ⅾクラスママカ-スト序列2番手のママ友の元に届いた。
「あ~らお久しゅうございます!今度うちの大和の8歳の誕生日ですの。是非ともご出席くださいね!それと……皆様にご連絡して頂けないかしらね?」麗子様からのお誘いに凍り付いているママ友多恵。
「嗚呼……そうでしたね?大和君の8歳のお誕生日が10月3日の日曜日でしたね?早速皆様にお伝えいたします」
「お願い致しますネ!嗚呼……それから…山下君と山下君のママにも連絡して下さらないかしら」
「そうですね。Ⅾクラスの誇り。イエイエ慶高学院始まって以来の天才児を、何としても我がグループに、取り込む必要はありますものね……」
「チッ💢……あなた……一言多いです事ヨ!何もお分かりになっていらっしゃらないのね?ホッホッホッホ!ともかく呼んで頂ければ良いのです」
「アッ……ハッハイ!」
ママカ-スト2番手の多恵は、いつものママ友5人に早速連絡するべく動いた。
「嗚呼……私多恵ですが?麗子様から大和君の誕生会のお誘いが来ましたのよ。あなた……後の4人の方に連絡して下さらない?お願いね……」
「アッ!ハイお伝えしておきますわ」
だが、肝心の山下君のママにも連絡を取らなければならない。早速電話を掛けた多恵。
”トゥルルルル” ”トゥルルルル” ”トゥルルルル” ”トゥルルルル”
「もしもし山下ですが?」
「あ~ら優馬君ママ……あのですね……お電話差し上げたのは他でもない、我がクラスの大和君のお誕生日の日が迫っております事ヨ。オッホッホッホ!そこでお話なのですが?大和君ママ麗子様が、是非とも優馬君もご招待したいとおっしゃっているの。ホ~ッホッホッホ!2週間後の日曜日是非ともいらっしゃって下さいね。お家お分かりにならなかったら……最寄り駅までお迎えに行きますが?時間は11時という事で……」
天才児山下君のママは只々啞然とするばかり。それでも断る暇なくまくし立てられ、ましてやママカ-スト最上位麗子様の御誘いを断ろうものなら、折角入学した栄えある名門校を退所に追い込まれる可能性だってある。
半ば強制的な言い方に、ぐうの音も出ず即答した。
「あっ!ハイ出席させて頂きます」
◇◇
この日は10月3日大和君の誕生日。
お洒落なドアベルが、引っ切り無しに心地よい鈴の音を鳴り響かせている。
玄関には数々の有名作家の調度品が所狭しと並んでいる。大理石の玄関から目の前には、何ともお洒落なガラス張りのらせん階段が目に入って来た。そして…少し目を上に向けると最高級バカラのクリスタルシャンデリアが一層モダンな空間を演出している。
”カランコロン“ ”カランコロン”
その時だ。麗子の待ち望んだ訪問者、それは天才児山下優馬君と優馬君ママだった。
優馬君ママは東京大学研究員として、独身時代は新薬の開発に明け暮れていたが、子供が誕生した事によってリモ-ト勤務に切り替えられていたが、今日は休日なので息子優馬と大和君の誕生日に駆け付けた。
「あ~らよくいらっしゃいましたこと。さあお上がりあそばせ」
「余りにも立派な佇まいに恐縮致しました。これは大和君の誕生日プレゼントです。ほんの気持ちですがどうぞ」
こうして…応接室に通された優馬君ママと優馬だった。だが、あんな喧嘩が有った事など噓のように大和と優馬はケロリとしている。
「優馬君わざわざ来てくれてありがとう」
それはそうだ。大和君は兄がやっと精神病院に入院した事によって、家庭内暴力も収まり、変な女子もいなくなり精神的に落ち着いてきている。
あの時は色んな事が重なり、あんな出まかせを言ってしまった。ママの優馬君との度重なる比較に加えて、兄の度重なる家庭内暴力。更に訳の分からない女子にうろうろされて睨み付けられ、精神的に追い詰められ爆発寸前のイライラが頂点に達していた大和。
だが、今は子供同士はもうあの日の暴言の数々はとっくに忘れている。
こうして…誕生会が始まった。
高級料理の数々に舌ずつみを打ち、子供達は子供達で大和君の部屋に行きゲームに興じたり、テレビを見たり束の間の時間を楽しんでいる。
◇◇
ここでママ友たちを紹介して行こう。
副リ-ダ-の多恵38歳のご主人様は今現在は40歳で大学の准教授である。それも……東京6大学の1つである大学の准教授だと言っているが、実はそれは違っていた。確かにお受験時には6大学のH大学の講師だったが、今は3流大学に移動になっていた。どうも飲酒運転の不祥事を起こし移動になったらしい。
だがプライドの高い多恵はその事実は口が裂けても言えない。そんな事を言えばママカ-スト最下層に転落間違いなし。それでも…息子の太郎君は成績がそれなりに優秀である。
それでは次の3番手ママあずさ36歳だが、ご主人様は38歳で自動車メ-カ-の課長さんだ。一見何の問題もない家庭に映るが、息子の翼君にはとんでもない悪い癖があった。それは自分の持っていない人が持っている羨ましいものを見ると、我慢が出来なくなる悪い癖が有った。そして…コッソリ盗んでしまう悪い癖があった。
それでは4番手ママ樹々を紹介して行こう。樹々は現在40歳でネイルサロン10店舗を経営しているヤリ手の女社長さんだ。そんな事も有り中々行事にも参加できないのでママカ-スト最下層に甘んじているが、中々どうして麗子様の信頼を一身に集めている裏番長的存在だ。そして…仕事で失敗続きの夫とは既に離婚していた。息子の蓮君はスポ-ツ万能の男の子。
そして…第5番目のママは今日は祖父が急に亡くなったので欠席していた。当然息子さんも今日は来れなかった。
こうして…誕生会もつつがなく終了となった。
◇◇
実は…遡る事2時間前。
「あ~ら三穂さん今日は誕生会にお越し頂き嬉しゅうございます。あの~?チョットお話し致しませんか?優秀なお坊ちゃまの教育方針を伝授して頂きたいわ」
「いえ……これと言った事は何も……」
「チョット……こちらにいらっしゃって……」
実は…麗子はかねがね三穂の事ではコンプレックスを強く抱いていた。自分は2流短大卒のノンキャリアで、これと言った取り柄も無いのに、旦那さんのお陰で大きな顔をしていられるが、実際には何もない女だという事をイヤと言う程思い知らされていた。
肩や三穂は子供が出来たにも拘らず、替えは幾らでもありそうなのに、三穂にしか出来ない仕事らしく、引く手あまたの東大卒の研究員。更には天才児山下君のママ。そこに来て我が家の一番知られたくない長男誠の醜態の数々を、目撃されてしまった。あんなに賢い天才児山下君だったら、幾ら小学2年生と言えども全てお見通しだ。何とかしなくては?
こうして三穂を誰もいない客室に呼んだ。
「どうぞお入りになって」
”ガチャン”
「オ~ホッホッホッホ!実は…誰もいないお部屋にお呼びしたのは他でもない優馬君の事でチョット。三穂さん優馬君おうちで何か……我が家の事……おっしゃらなかったかしら?我が家の長男誠が何か……女の子をどうにかしているとか……?そんなデタラメおっしゃるのでしたら我が家を隅から隅までお調べになって……」
「私は何も……私は何も……優馬から聞いていませんが?」
「あなた……我が家の事……ある事無い事おっしゃるのでしたら、こちらにも考えがございましてよ!あなたのお兄さんの事白日の下に……オッホッホッホ!だから……根も葉もない話は断じて許しません。これ以上我が家にケチをつけたらそれこそ……お分かりよね?」
「ウウウッ!( ノД`)シクシク…ウワ~~~ン😭ウワ~~~ン😭」
折角招待して頂き楽しい時間が過ごせたと思ったのも束の間、こんな酷い事を言われて立ち上がる力もない三穂だった。ましてや一番恐れていた殺人者兄の事まで知られてしまい途方に暮れる三穂。
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