第9話 麗子殺害?
婚姻届を出した2人のうち一方が、すでに外国で婚姻していたというケースでも、日本の役所でチェックしきれないで受理されてしまうことがある。
それは……外国で婚姻していた場合は、現地の国が発行する婚姻証明書を在外公館や本籍地の役場に提出しなければならない。この届け出をしないまま別の人と婚姻した場合、婚姻届が受理されて法律婚が二重に成立することがある。
◇◇
大輝は妻ジュリアとアメリカで結婚した事を、役場に届け出をしておらず、その後に日本で出会った美咲と独身と偽って結婚した。
どうしてこんな事になってしまったのか?
それは何と言ってもこの難局、お金を工面する金ズル探し。
「ジュリア、アメリカ本社の売り上げはどうだ?」
「チョットずつ回復に向かっているわ」
2人は頻繫に電話でやり取りをしているが、アメリカは少しずつだが売り上げが上昇している。それはひとえに妻ジュリアの手腕によるものだった。
日本では1990年代初頭のバブル崩壊で高級ブランドがそれまでの勢いを失い、その枠を埋めるような形で、1990年代後半から低価格が売りのファストファッションブランドがアパレル市場で頭角を現し始めた。
ユニクロやしまむら更には海外ブランドZARAやH&Mなどのブランドが、次々と日本に上陸し始めた。2000年代後半から本格的なファストファッションブームが到来し、今では若い世代に限らず、幅広い年齢層の人達から愛されるようになったファストファッション。
更に、新型コロナウイルスの感染拡大が追い打ちをかけて、名門ブランドの経営破綻や大手ブランドの大量閉店などが相次いだ。
だが、長らく勝ち組ビジネスモデルとされてきたファストファッションは、大きな転機を迎えようとしている。それは環境に優しいオーガニック素材を用いたサステナブルファッションの取り組みを推奨する声が、ファッション業界全体に広がりを見せているからだ。
そこでファストファッション業界も徐々に、オーガニック素材を用いたサステナブルファッションに取り組む企業も拡大して来ているが、しかしながら、ファッション業界全体としては未だサステナブルファッション製品の比率は少ない。
※サステナブルファッション: 生態系を含む地球環境や社会に配慮した衣服の生産から着用、廃棄に至るプロセスにおいて将来にわたり、持続可能であることを目指す取り組みのこと。
だが、経営悪化の一途を辿っていたアメリカ本社「バービ-ズ」の副社長ジュリアは、これ幸いに良い案を思い立った。
「これを追い風と捕らえて、サステナブルファッションをローコストに抑えて製品化して行こう」と唱えた。
これが功を奏したのか、サステナブルファッションは一部のマダムの間で評判を呼び売り上げが格段に拡大して行った。
一方の東京支社は一向に改善が見られない。
大輝はお金の工面に四苦八苦していた。
そして…四方八方金の工面で走り回っているが、それでも焼け石に水。
そこで今流行りのマッチングアプリに登録した。
それはズバリ金ズル探し!
その中で何人か目ぼしい女性と会って見たが、金になる目ぼしい女はいなかった。
だが、美咲は違った。
美咲の実家は大地主さんで、更に静岡でお茶の製造販売を代々経営する「春陽茶房」という有名なお茶屋さんだった。更には両親が事故でこの世を去り多額の保険金が支払われていた。
さらに美咲自体が金のなる木。
こうして…やっと探し当てたターゲットに巡り会えた。そして…怪しまれない内にサッサと偽りの重婚をしてしまった。それも……結婚していた証、現地の国が発行する婚姻証明書を提出して、戸籍上の届け出をしなければならないのに届け出を出さなかった。
それではジョセフの為に心血を注いでくれている山中課長とは、その後どうなったのか?
実は美咲がママ友である百合から聞いていた話。
「大輝さんがマンションに女性と入って行ったので、不審に思い付いて行ったのよ。するとね……苗字が全く違う外国籍だったのよ」
あの日は不動産会社の営業マンと一緒に、マンションの購入の為に、あちこち見学に出掛けていた大輝と山中だった。賃貸契約がもう直ぐ切れる入居者の名前が表札にあったが、その部屋はとてもお洒落な作りだったので見学となった。
大輝は卑劣な男だ。山中と言う女がいながら美咲とサッサと結婚してしまった。そして…美咲と結婚した話は山中には一切していなかった。だが、本国アメリカ人妻の事は当然知っている。
そこで結婚を匂わせ、2人で住む為のマンション探しに出向いていた。当然マンションの頭金は大輝よりも8歳も年上の山中が支払った。
「妻とは会社の株券や会社の諸々の資産は折版になって居るんだ。だって妻も副社長として働いていているから……だからいざとなれば離婚しやすいんだ」でもこの話は本当だった
こうして…大輝は二重生活を送っていた。だが、あれだけ頼もしかった山中に最近異変が見られ始めて来た。お金の調達がかなりペースダウンしている。
「もう俺達はおしまいだ。こんな8歳も年上のおばさんとよくここまでやってこれたもんだ。もう別れよう」
「イヤ!嫌よ。私大輝を失ったら生きて行けない。お願い別れるなんて言わないで!お金の工面するから3日だけ待って……お願い!」
更には警視総監夫人麗子との不倫。
大輝は東京支社が思うようにいかないので、セレクトショップも運営している
麗子が購入したエルメスのバックは、大輝から購入していた。
※セレクトショップ:複数のメーカーやブランドの商品を扱う小売店のこと。
だが、恐ろしい事件の幕開けが・・・・・
麗子様が殺害された……?
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