殺し屋さんとめぐる世界紀行——孤独のグルメと歴史と文化、そして死生観

どこか古風な語り口の殺し屋さんが、お仕事がてら世界各国の旅模様を綴っていく紀行文です。
トルコにブラジル、チェコ・オーストリア、そしてマレーシアやシンガポール。
これらの国々にゆかりのある方はもちろん、行ったことがないという方も、その場の空気感まで肌で味わえるような作品になっています。

一番目を引くのは、やはりグルメでしょう。
健啖家でもある殺し屋さんが、料理やお酒やスイーツまで、あらゆる名物を食べ尽くします。
また、その国の歴史や民族間の問題、特徴的な気候や建造物など、読むだけで勉強になること間違いなしでしょう。

しかし観光ばかりもしていられません。殺し屋さんは殺しのお仕事で来ているのです。
彼の特殊能力は本文を読んでいただくとして、お仕事には途轍もない精神力が必要です。
それに伴って綴られる独自の死生観がまた、達観と覚悟と責任が滲み出ているようで、非常に読み応えがあります。
お仕事後の禊のスイーツは、もはや本シリーズの名物と言っても良いでしょう。

この作者さまにしか書けないタイプの作品だと思います。
ぜひ多くの方に読んでいただきたいです。

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