殺し屋さんが車窓から見る世界は、悲哀と優しさと美味しさに満ちている

殺し屋が世界各地のグルメを食す。
殺しとグルメ。なんとも奇妙な組み合わせです。
そのグルメというのがとても美味しそうで、応援ハートを押したら目の前にその料理が出てきてくれないかな!と思わずにはいられないほどのクオリティーで書かれています。
ズバリ、飯テロです。特に肉料理が多いので、肉好きの方は空きっ腹で読んではいけません。
さてこの殺し屋さんですが、特殊な才能を持っています。ですが彼は、好き好んで人を殺しているのではありません。殺めた人物よりも、殺し屋の方が死を体感しています。殺し屋は死を繰り返しているのです。
だからこそ、彼は食べるのでしょう。
美味しいものを腹一杯に食べる。
それは生きている者の特権です。そして、生きている者が食べるのは命を奪った生き物たち。
殺し屋は罪の意識に囚われながら生きている。だからこそ食事をありがたく、美味しくいただくのでしょう。
また、この殺し屋さんは哲学的でもあります。観光スポットで写真を撮ってSNSにあげるような、そんなはしゃぎかたはしません。
その国の文化を感じ、歴史に思いを馳せ、風景を心に留め、人々の生き方に深い理解を示す。国に刻まれた暗い感情に心を寄せる様は、実に誠実です。
彼は、悲観的な物の見方はしません。未来への希望を見出し、祈る。祈りが込められた文章は、読者の胸を揺さぶります。
なんとも素敵な殺し屋さんです。
彼は罪滅ぼしのために、苦手な甘ったるいデザートだって食べるのです。甘いデザート、私にはご褒美ですが……。

これからも体をお大事に、心が健やかでありますように。そう一読者として願いながら、殺し屋さんの旅を見守りたいと思います。


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