第8話

「特にめぼしい物は無いな」

 俺は2人の土産を探して彷徨っていた。シアとティナが喜ぶものを…と考えているのだが、中々見つからない。(シアとティナはライルが選んだ物なら大抵喜ぶ)


 これがバズやゼルガの爺さんなら酒を買えば済むんだがな。年頃の女には何を買えば良いのか判らない。


「どうしたもんか…」

 この際村長に頼るか?村長にはティナと同い年の娘が居るからな。相談に乗ってくれるだろう。

 

「宿に戻るか」

 村長が居るであろう宿に戻ろうとした時、視界の端にある店が映る


「いらっしゃい」

 そこはボロい店で、婆さんが店番をしていた


「…」

 ポーションに剣、果ては鍋等、統一なく様々な物が置かれていた。


「これは…魔道具か?」

 全ての品が魔道具であったのだ。


「ほう。解るのかい?」

「ん?ああ、魔道具…というか魔法に詳しい奴が居てな。そいつに色々教わったんだよ。騙されない様にな」

 それは爺さんだ。道具に宿る魔力を見ろ。心臓足る魔石を見ろってな。


「ひひ、ここにあるのは正真正銘の魔道具さ」

「だろうな」

 剣を手に取り、見る。

「これは魔力を流せば切れ味が増すタイプか?」

「ひひ、正解さね。ただし直ぐに刃こぼれするがね。」

 他にも刃を飛ばす(物理)の剣や柄がぐにゃぐにゃな槍とかただの玩具の様な魔道具が沢山あった。


「なぁ…あんたの使ってる魔道具は売り物か?」

「……何の事じゃ?」

 俺は彼女に訪ねる

「あんたの姿を偽る…」

 そう言って俺は後ろに飛び退く。今まで俺が立っていた場所には数本のナイフが刺さっていた。


「いきなり攻撃とは、穏やかじゃないな」

「……」

 彼女の雰囲気が変わる


「…」

 ああ、やはり俺は彼女達の隣には相応しくない。何故なら今、俺に放たれる殺気に俺は口角を上げて、高揚しているのだ。


「ああ、心地良い殺気だ。あんた、ただの魔道具師じゃないな。」

 ただの魔道具職人がこんな殺気を放てる筈が無い。

 そして俺は彼女に殺気を放つ

「っ!?」

 それに反応して彼女は俺に向かってナイフを投げるが俺はそれを躱す。しかし、躱した先に魔法が放たれる。


「ちぃ」

 その魔法を薙ぎ払い店主に詰め寄ろうとするが


「はぁ?」

 俺はその光景に一瞬呆然とする


「マジかよ」

 火、水、岩、風の魔術が既に発動されていた。それは一秒に満たない程の瞬間だ。爺さんでもこんなに速く同時に魔術を発動出来ないぞ。しかも


「詠唱無しかよ」

 術者本人は攻撃態勢に入っていた。これは避けれないな。狭い店の中で四方八方から放たれる魔術を避けるのはほぼ不可能だ


「すまないな。シア」

 俺は彼女の顔を思い浮かべ、謝罪の言葉を口にする。

 そして魔術の集中砲火を浴びる



「……」

 店主は警戒を解かずにライルの居た場所を見ていた。

 四方八方から逃げ場の無い攻撃、相手は盾どころか鎧すら着ていない人間だ。普通ならばただでは済まない。


 普通なら


「ああ…やはりな。これはただの魔術じゃないな。」

 煙が晴れるとそこには無傷の男が立っていた。



「……」

 店主は警戒を強め、魔力を練る


「これは…精霊術?このレベルだと……そうか」

 男はブツブツ1人言を言っている。そして


「なぁ、あんたエルフだろ?」

「っ!?」

 男は店主の正体を見破ったのだ







 

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