第11話 傭兵、とんぼ返りする。
宿に戻り村長達と合流して、明け方に街を発つ。その後は何事もなく7日の日程で村に帰って来た。
村に着いた瞬間に俺達の下に超高速で接近する気配を感じて俺は衝撃に備え身構える
一瞬村長達が不思議そうな顔をしたがその後に俺が吹き飛んで慌てだすが…
「ライ兄!お帰り!」
「いてて…ただいま。ティナ」
俺に抱き付くメイド服の妹分からの手荒いお出迎えを受ける
状況を理解して笑いが村長達から起こる。
「ライル殿が吹き飛んだぞ」
「はは、嬢ちゃんに全く気付かんかったぞ」
「大丈夫ですか?ライルさん」
「ああ、大丈夫だ。ほら、ティナ退いてくれ。」
「は~い」
ティナは俺の上から降りる。そして俺は起き上がり、近付いて来た人物に挨拶する
「ただいま。シア」
「お帰りなさい。ライル。それに村長様に皆様もお帰りなさいませ」
聖女様が微笑み俺達を出迎える。その微笑みに男達は顔を赤くする。
「はい。シアさん、ただいま戻りました。」
その後、村人達が集まって来る。なんだかんだで約半月振りだからな。道中だって魔物の存在もあるから無傷で帰還出来ない場合もある。村の者達も続々と集まって来る。
村長が皆をまとめ買い付けた物の分配をした。それに俺達はノータッチだ。
何故なら俺達は自分の食い扶持は自分達でどうにかできるからだ。村人優先で何ら問題無い。
「と、そうだ。シア」
「はい?」
「強化魔術を頼む体力と俊敏で」
「?えぇ。構わないけれど…」
シアは疑問に思いながらも俺に強化魔術を施す。
「どうしたの?」
「ちょと街まで戻る用事があってな」
「ぇ?」
シアがキョトンとする
「じゃあまた暫く留守にする。悪いな」
そして俺は走り出す
「ちょ!?ライル!?」
ライルの背中がどんどん遠ざかる…
「…ライルのばぁかーーー!!」
やっと想い人が帰って来たかと思えば直ぐにまた出て行く。
そしてライルの後を物凄いスピードで追う影が
「って、ティナまで!?あーもう!2人とも勝手なんだから!!」
その姿は本来の彼女を知る者が見たら目を見開く程に聖女とはかけ離れた、ただの年相応の少女の姿だった。
………
ライルはシアの魔術で強化された状態で全力で走る。
その速度は常人の出せる速度を遥かに越え、馬にも負けない程だった。しかし
「っ!?」
「追い付いた!」
ライルの直ぐ横に並走するメイドが現れる。
「ティナ!?」
「今度はボクも一緒に行くよ」
ティナは素の能力でシアの強化を施されたライルの全速力に追い付いた。メイド服という服装で
「ティナ…シアを」
1人残して来たのか?と問おうとしたがその前に
「シア姉…絶対不機嫌だよ?そんなシア姉の相手はボクには無理」
「…」
勇者すら恐れる聖女。ライルの頬を冷たい汗が伝う。
「帰ったら覚悟しておくか…というか、シアの居ない場所で姉って呼ぶなら本人に言ってやれば良いだろ」
「う~ん。まぁその内ね」
ティナはシアの事をアリシアと呼ぶが俺以外に誰も居ない時はシア姉と呼んでいる。
シアなら絶対に喜ぶだろう。
そしてライルとティナは物凄い速度で駆け抜ける。
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