第10話
「なぁ、あんたエルフだろ?」
「っ!?」
店主はその言葉に更に殺気を強める。
「おっと、悪いな…俺は敵対する気は無いよ」
俺は両手を上げて敵意が無い事をアピールする
「……」
しかし、店主は疑っているのか一向に警戒を解かない。そりゃ殺気を放ち返したから当然だろうな。
「何故…気が付いた?」
「ん?それはあんたの正体か?それとも魔道具にか?」
「両方だ」
俺が何故偽装の魔道具を見破り、彼女の正体を暴いたのかが気になるみたいだな
「簡単な事だよ。姿は変えられても体型や声は変えられないみたいだからな。」
「な!?しかし…」
「体型の分からないローブに変声の魔道具の併用なら誤魔化せただろうが、相手に誤認させる催眠系はレジストされれば意味が無いだろ?」
「っ…そういう事」
つまり彼女は相手に幻を見せる魔道具で自分を老婆に見せて居たのだ。恐らくかなり限定的な効果な魔道具であろう。
俺は催眠系のレジストを爺さんとシアに叩き込まれたからな。
特にシアから魅了系のレジストを集中的に叩き込まれた。文字通り徹底的に。(その後、シアは自分がライルに魅了を掛けようとしてレジストされて少し後悔したのであった。)
「それで、あんたの正体だが、いくら高名な魔術師でも一切のズレもなく同時に違う属性の魔術を発動させるのは不可能だ」
あの賢者と云われる爺さんでも0.5秒は掛かる。だが、別人が各々同じタイミングで魔術を放てば?
つまり、あの魔術は彼女の魔術では無い。しかし、この場には俺と彼女だけ。ならばそれは見えない何か
「そして思い当たるのが精霊だ。精霊は目には見えないが、エルフは別だ。彼等は精霊と言葉を交わし、姿を見る事が出来るからな」
「…随分詳しいな」
「まぁな。エルフの友人が居るんでね。そいつから聞いたのさ」
「……」
殺気は収まるがまだ警戒は解かない様だな。
「俺はライルだ。傭兵をしている」
とりあえず自己紹介をする
「…フリエラよ」
「そうか。よろしくな、フリエラ」
「……」
向こうはよろしくする気は無いみたいだな。
「それで?どうするつもり?」
恐らく俺が何を求めるか警戒して居るのだろう。先程、精霊の指摘をしたら四方からの殺気が隠されなくなった。どうやら彼女は精霊に好かれている様だ。
エルフは何かと生きづらいからな。この近辺はマシな方だが、場所によっては奴隷として高く売れる。
人間至上主義の連中に見つかったらどうなるか分からない。彼女の警戒にも頷けるだろう
「いや、姿を変える魔道具があれば欲しいな。と…ウチのお嬢様がお転婆でね。お忍びでよく街に出るんだ。しかし、目立ってしまって困っていたんだが…そこでたまたま立ち寄った町でこの店見かけてね。」
「…嘘…ではなさそうね」
いや、嘘だが。お
実際にアリシアは目立つ事を避ける為に町に出ないし、仕方なく出る場合もフードを目深にかぶり顔を出さない様にしている。
仕方ないとはいえ彼女にそんな窮屈な生き方をして欲しくない。
「…姿を変える様な高等な魔道具は無いわ。精々認識をずらして他人の空似程度に認識される程度の物と…髪の色を変える魔道具位かしら。」
「それを二人分欲しいんだが、可能か?」
「金貨20枚」
「高いな」
おおよそ平民が1人で一月銀貨10枚で最低限生活が出来る。そして大体の平民の収入が銀貨30~50枚だ
そして銀貨100枚で金貨1枚だ。
「嫌なら構わないわよ?」
「いや、買うよ」
おれは金貨の入った袋を出す
「次元収納のバック…」
彼女が驚く。次元収納の効果を持った魔道具はかなり貴重だ。その殆どがダンジョン産で市場には出回らない。唯一作れた人物が居たのだが…
「賢者が亡くなって更に希少性が増したからな」
そう。このバックは爺さんのお手製だ。正確には数人の職人との合作だが。
シアとティナが欲しいとねだるとあの爺さん達は喜んで作った。
2人を本当の孫の様に可愛いがっていたからな。彼女達には甘々だった
「…そうね。商人からした喉から手が出るほど欲しい物だわ」
「これはそんな大した物じゃないよ。精々この10倍程度しか入らないし、時間も普通に経過する。空間も同じだから食べ物は入れたら最悪だ」
俺の持つ収納袋は大きく無いし、他の物より劣る。何せ
『ほれ、失敗作じゃが無いよりマシじゃろ。お前にくれてやるわい』
と、爺さんが雑に俺に渡したのだ。ティナやシアの持つ物はこれとは比べ物に成らない性能だ。 売れば小さな国なら買えるだろう(多分)
「それでも…よ。と、金貨20枚確かに。製作に5日程掛かるけど大丈夫?」
「5日か…明日にはこの町から出るんだ。取り置きは可能か?」
「料金は受け取ったからまぁ…余り遅くないなら」
「そうか…なら10日後に取りに来るよ」
フリエラにそう言って俺は店を出る。一旦村に戻ってまた来れば良い。俺1人ならば3日もあれば来れるからな
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