第12話 傭兵と勇者、野宿する
「あ、あの…シアさん?」
「はい?」
村長達が怯えながらシアに話かける。
「えっと…此方が聖水やポーション等の売上分です。」
村長がシアに取り分の金額を渡す。
「はい。確かに。ありがとうございます」
「いえ、礼を言うのは私ですよ。シアさんのポーションは評判が良いので高く買い取って頂けました。ですが…」
村長が何か言おうとするがシアは首を振る。
「市場価格で構いませんよ。余剰分は村の予算等に回して下さい。」
シア達はそれほど金銭は求めていない。むしろ彼女達は王都の一等地に豪邸を建てて遊んで暮らせる程の蓄えがあるのだ。
伊達に勇者一行では無い。ライルやティナが高ランクの魔物を討伐すれば直ぐにお金は貯まる。
「ありがとうございます。ところで…ライル殿…」
「……(むす)」
ライルの名前が出た途端に不機嫌になるアリシア。
「その…シアさん達の贈り物を受け取りに町に戻る…と」
「贈り物ですか?」
「はい。何でも新しく作るらしく、滞在中には出来上がらなかったので改めて受け取りに…と」
「では、私はこれで…広場で買い付けた物を配分していますのでシアさんも良かったらどうぞ」
「はい。ありがとうございます。村長さん」
そして村長は広場に向かう。
「ふふ、贈り物…ですか」
シアの頬は自然と弛んでいた。ほんの少しだけ機嫌を直したのであった。
「強めに強化しておいて良かったわ」
…………
暫く走り続ける
「矢張今日中には着かないか」
「行ける所まで行く?ボク達なら問題ないでしょ?」
「そうだな。シアの強化は…まだまだ持ちそうだな」
シアは賢者の愛弟子で本人にも凄まじい才能があり、魔術に関しては相当な実力だ。得意の光属性ならば賢者ですら及ばないであろう。
「よし、この辺で良いだろう」
町の門が見える場所まで来たが既に何人かのテントを見かける
「意外に人が居るね」
「ああ。町の規模の割りにな」
決して大きいとは言えないし、周辺にダンジョン等の人を惹き付ける特産品の無い町にしては珍しい。
「ティナ。頼む」
「どれくらい?」
「テントを中心に10m」
「は~い」
軽く返事をしてテントに向かう。そして魔力を解放する。
これは魔物避けだ。魔物が縄張りを示すマーキングの一種でティナの魔力で周囲を満たす。これにより、魔物はこの高密度の魔力を恐れて近付かないのだ。
主に竜種等の高位の魔物の縄張りの示し方だ。
「これで魔物は問題ないな」
後は賊などだが目の前に町があるのだからこんな場所では襲わないだろう。
荷物も殆ど持っていないし。金目のモノは精々ティナの身くらいだが、ティナを襲うくらいならば腹を空かせた魔物の群れに裸で特攻する方がましだ。
特にティナは寝込みは自制が効かないうえに、歯止め役のシアが居ない。そうなれば血の海が広がる事だろう。
「うん。誰も来ない事を祈って置こう」
そしてテントを張り、焚き火の準備をする。
「よし、ティナ。飯の…」
「ん?」
「いや、そうだよな」
飯の用意をしようと言い掛けたがティナは魔法袋から料理を取り出す。
ティナとシアの持つ魔法袋は特別製で時間経過が無い(或いは極めて遅いかだ。)
ティナが取り出した料理は出来立てと言われても疑わない。 湯気が上がり、食欲をそそる香りだ。
「はい、ライ兄」
「ありがとう」
「それじゃあ…」
「「恵みに感謝を。」」
2人で感謝の祈りを捧げる。俺もティナも柄では無いんだがな。シアは元聖職者で俺達も彼女と過ごす内に身に付いた習慣だ
「美味いな」
「シア姉の手作りだよ。ボクも手伝ったけど」
「そうか」
そう言ってティナの頭を撫でる
「えへへ」
「さて、そろそろ寝るか。明日は日の出と共に町に入るからな」
「は~い」
そして寝る準備を始めるが、ティナが俺の目の前で服を脱ぎだす。
「こら、テントの中で着替えろ」
「別にライ兄しか居ないから問題ないでしょ?」
「はぁ…シアからも言われいるだろ?もう少し慎みを持てって。」
「…ぶぅ」
「膨れても駄目だ。じゃないと今夜は別々のテント…「テントで着替えるよ!」…おう」
ティナは直ぐにテントの中に入る。
「ライ兄。着替えたよ~」
「ああ。入るぞ」
テントの中に入ると半袖とショートパンツに着替えたティナが居た。
俺はそのまま布を被り、横になる。そしてモゾモゾと布の中に入ってくる少女
「えへへ。今日はボクがライ兄を独り占め~」
「ああ」
そう言って俺に引っ付くティナを抱き寄せる
「お休み。ティナ」
「おやすみなさい。ライ兄」
俺達は眠りにつく。危険はほぼ無いとはいえ無警戒には成れないので深く眠る事はしないが、ティナの魔力とこのテントであれば大抵のモノは凌げる。
………………
「ライルのばぁ~か。ティナの薄情もの~」
そして1人寂しく眠る聖女。
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