第13話 勇者=狂犬
「…」
「すぅ…すぅ…」
目を覚ますと直ぐ側から穏やかな寝息が聞こえる。
俺はその綺麗な金色の頭を撫でる。
「うにゅぅ」
擽ったそうにする少女。しかし、どこか幸せそうな寝顔だ。
俺はそっとティナを引き剥がす
「ぅにゃぁ~…すぅ…すぅ」
「にしても良く寝ているな」
警戒心の欠片も無く眠っている。ティナは俺達の中で一番警戒心が強く、気配に敏感だ。そんな彼女が無警戒という事は近辺は警戒する程では無いという事だ。
「そろそろ夜明けか?起きろティナ」
「うぅ…すぅ…すぅ」
「…」
呼んでも揺すっても起きる気配が無い。こういう時は…
「…」
「ッ!」
ティナが飛び起き俺に飛び掛かってくる。俺は身体強化を発動する。ティナは俺の首に手を掛ける寸前で止まる。
「起きたかティナ」
「その起こし方止めてよぉ」
「他の方法で起きないティナが悪い」
「その内ライ兄を殺しそうだよ」
そう言って俺の首から手を離す。
ティナを一発で起こす方法。それは殺気や害意を向ける事だ。
そうするとティナは深く眠っていても無意識で迎撃体制を取り攻撃してくる。
初めは文字通り殺していた。次第に殺す一歩手前で覚醒する様になった。
「大丈夫だよ。ティナを信じているし、対策はしている。シアの御守りも有るからな」
一応身体強化で防げる程度の攻撃だ。
「そんなんでシア姉の御守りが発動したらボクが怒られるよ」
そして、その後にライルに聖女の雷が落ちる。
「ほら、門に向かうぞ。準備しろ」
「は~い」
そしてティナは軽装の防具を身につける。その間に俺はテントの片付けをする。
「水よ」
魔術で水を出し。顔を洗う。そしてティナの髪を鋤いてやり、後ろで結ってやる。
「ん、しょっと」
そして短剣を2振り腰に装備する。これでパッと見、普通の冒険者の出来上がりだ。
俺も傭兵の装備を着用して準備完了だ。
そして俺達は何事も無く町の中に入る事が出来た。しかし、フリエラの店に行くには些か早い。
「とりあえず市場でも見て回るか?」
「うん!」
ティナがはしゃぎながら市場を回る。俺はそんな彼女を見守りながら歩く。
「…?」
何か違和感を感じるな。嫌な気配は無いが、何処と無く張り積めている様な
「ライ兄。見られてるよ」
「やはりか。判るか?」
「うん。どうする?殺る?」
この勇者は本当に物騒だな
「敵意は?」
「感じないかな?どちらかと言うと…警戒かな?」
「…ふむ」
俺は注意深く周囲を観察する。すると冒険者にや一般人に扮して周囲を気にしている者を数人見つけた。
「多分…あの子を見ていると思うよ?貴族かな?」
「確かに綺麗過ぎるし、姿勢が良い…つまりはお忍びでアレは護衛か」
「多分。敵意とかは感じないから。」
身なりは平民の様にしているのだろうが、服の素材や髪や肌の質…そしてその綺麗な所作が彼女が貴族、或いは相応な家柄の子だと判る奴には判る。
「まぁ、関係無いか」
所詮他人だ。それにあの数の護衛が居るんだ。問題ないだろう
「そろそろ時間だ。行くぞ、ティナ」
「は~い」
ティナも興味を無くしたのか俺の後ろをトテトテと着いてくる。
フリエラの店にの前に到着し、扉を開く。
「「ッ!」」
突然魔術が飛んでくるがそれを俺は回避し、ティナは打ち消す。
そしてティナは魔術を放ったであろう人物に接近する
「ティナ!止まれ!!」
俺は叫ぶ
「…」
「ぁぅ…(ぶるぶる)」
そこには首に短剣を突き付けられて震えながら泣いているフリエラと今にも喉を切り裂かんとしているティナ。
「…ライ兄。敵」
「敵じゃないよ。彼女はフリエラだ。俺の友人だよ」
「…」
ティナは短剣を少し離しフリエラを見つめる
「(コクコク)」
必死に頷くフリエラ。ティナは次に俺を見る。俺も頷く
「…わかった」
若干不服そうではあるがフリエラから離れる。
「悪かったなフリエラ。いきなり攻撃されたからつい反射でな」
「…」
「とりあえず片付けておくから着替えて来い」
「…(コク)」
フリエラは顔を赤くして奥に引っ込む。
俺は水の魔術を放ち床を洗い、風の魔術で空気を入れ替える。まぁ…アレだ。床をフリエラが濡らしてしまったのだ。
「…おい、主人の許可無く攻撃魔術を放つな。もし、俺がティナを止めなかったらお前らのせいでフリエラが死んだんだぞ?」
『『『『『……』』』』』
俺達に魔術を放ったのは彼女が使役する精霊だ。それも主人のフリエラに許可無く無断で攻撃してきたのだ。
「今回はライ兄と…あのエルフに免じて許すけど…次は無いよ?」
ティナは冷たい目で天井付近を見る。完全に精霊知覚しているな
『『『『『!?』』』』』
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