第14話 勇者、勘違いされる
「その…えっと」
戻って来たフリエラがティナに怯えながら俺をチラチラと見る
「この子はティナ。俺の妹分だ」
「ティナ」
ティナはそれだけ言ってフリエラに見向きもしない。
まぁフリエラが原因では無いにせよ第一印象は最悪だよな
「…その…いきなり攻撃してごめんなさい…普段そんな事無いのに…」
「別にいいよ。かすりすらしないし、仮に当たっても大した事無いから」
「あわわ」
ティナは1点を見つめて言い放ち、フリエラがあわあわと焦る
「はぁ…ティナ」
俺はティナの頭に手を乗せる。
「…」
「フリエラも改めて悪かったな。」
「う…うん…」
フリエラはティナに怯えながらも頷く
彼女と契約している精霊はティナの気配を恐れたのだろう。
彼女は勇者という肩書きはあれどそれは勝手に付けられたモノだ。
神の加護も聖剣に選ばれた等のお伽噺の様な勇者では無い。
彼女は造られた勇者だ。いや、都合の良い殺戮人形だった。それがある思惑で勇者に仕立てあげられた。
つまりは…ティナは拭えない程の闇を抱えている。その気配を敏感に感じ取った精霊がフリエラを守る為に攻撃をしたのだろう
「……」
とりあえず俺はティナを撫で続ける。ひたすら撫で続ける。
「…」
「ティナ」
「…うん」
そこでティナは漸くその威圧を解く。
「改めて悪かったなフリエラ。この娘は何時死ぬかも分からない世界で生きて来たんだ…だから殺気や魔術の気配には敏感なんだ」
「っ…そうなの…本当にごめんなさい」
フリエラへライルの説明でティナはスラム出身と勘違いした。
ティナの見た目は可愛らしく、売ればかなりの価値になるだろう。
そしてスラムは常に死と隣り合わせだ。パンの一欠片を巡って殺し合いが起こる程だ。ましてや子供で女の子であるティナは人攫いの餌食になり得る
そんな環境で生きて来たのだ…気配に敏感になり、殺られる前に殺るという思考になるのも頷けた。
ライルが誘導したとはいえ、フリエラは勝手にそう勘違いした。
そして
「本当にごめんなさい」
何故か泣きながらティナを抱き締めるフリエラ
「…ライ兄」
ティナが困惑しながら俺を見る
「少しそのままにしてやれ」
「まぁいいけど」
ティナもフリエラ自身の事は嫌っていない様なのでそのまま抱き締められていた。
『『『『『……』』』』』
精霊は気まずいだろうな。いや、感情がある程の上位の精霊では無いだろうから恐らくは本能でティナに恐怖して暴走したのだろうな
そしてフリエラを危険に晒し、後悔させ泣かせた。
これでもう俺達に攻撃する事は無いだろう。次は確実に殺されると感じた筈だからな
辺境の村の元勇者と元聖女と傭兵 八幡 @yahata-80
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