第4話 傭兵
俺は傭兵として生きてきた。生まれ故郷をある国の貴族に焼き滅ばされた。
俺の村は魔族、人間、獣人…様々な種族が住んでいた。
それが気にくわない奴等が居た。人間至上主義の連中だ。
たまたま狩に出ていた俺と兄だけが生き残った。
俺達は仲間を集めた。俺達と同じ境遇の仲間を。
そして村を焼いた貴族を一族郎党焼き払った。
俺の復讐はそこで終わった。しかし、他の奴等は違った。その国を他の国を、人間を滅ぼすと…そして兄を祭り上げた。
それから俺は彼等とは離れた。そして傭兵として仕事をこなして生きてきた。仕事は何でもした。魔物の討伐は勿論、殺しだって…
そんな俺にある依頼が来た。
勇者に同行し、共に魔王を討て。と、俺はその依頼を受けた。
俺の他にも腕の立つ奴等に依頼が出ていた。
そして金髪のチビがどうやら勇者の様だが…まるで感情が無い人形だ。
勇者…アルトはまさしく殺戮人形だった。魔物を初め、敵と認識した者を壊し、殺す。そこに躊躇い等なかった。そして…常に無表情だった。怒りも悲しみも、哀れみすら抱かずにただ殺す。僅か10歳前後の子供がだぞ?
「少し、調べてみるか」
俺はなるべく勇者を気にかけ、話す様にした。次第にアルトは俺達と話す様になって来た。(ほとんど聖女様のお陰だがな)
そして得た情報を纏め、調べた。胸糞悪い結果だった。
その後、俺は何かと勇者の世話をする様になった。
俺はお世辞にもいい人間とは言えない。正に外道だろう。しかし…こいつには人間らしく在って欲しかった。
少しづつだが、アルトは人間らしくなって来た。よく喋る様になり、笑う様になった。
勇者が女だと発覚した。そして本名がアルティナと言った。
その後は聖女様が側につく様になった。
いつ頃かアルトは俺を兄と呼ぶ様になった。聖女様が自分をお姉ちゃんと呼ばせようとしていた。
ゼルガはじぃじ
ローナはローねぇ
バズはハゲ
バズは怒っていたが…大人気ない奴だ
………
そして聖女様の悩みを聞いた。聖女様の印象は生真面目そうな箱入り…だった
だか、意外にも柔軟な対応をしたり、偏見が無かった。だが、それはそう努めていただけだったのだ。
彼女は自分の信じていたものと現実の差に苦しみ悩んでいた。
ある夜に彼女から自分の信じていたものがまやかしだったら…と聞かれた。
だから俺はありのままの世界を見ろと言った。そこで彼女が何を感じ、何を思うか。
その後、何故か彼女が俺の膝の上に座り、そのまま眠る。
「…仕方ないな」
俺は起こさない様に彼女の頭を撫でる。かつて自分がそうされた様に…焚き火と風の音に彼女の寝息を聞きながら見張りをする。
…時折バズのイビキが聞こえるが。
そして俺の下にある依頼が来た。「魔王討伐の後、勇者並びに聖女を殺せ。」と、依頼主は恐らく国か教会だろう。
ティナはこの旅で人間性を取り戻した。聖女様は外の世界を知ってしまった。
「……」
「爺さん、ローナ、バズ…話がある」
俺は自身の事も含め包み隠さずに話した。
…………
俺達はとうとう魔王を討った。かつて兄と呼んだ男を…
そして俺はアルトに槍を向ける。この子は間違いなく、次の魔王として祭り上げられる…兄貴の様に。それほどの力と狂気を持っている。
そしてアリシアが俺とアルトの間に入る。
彼女も…恐らく国に戻っても録な扱いは受けないだろう。良くて象徴として飼い殺しか、最悪、暗殺だろうな。彼女は民衆に人気がある。それを利用されるだろう。
何よりも彼女は外の世界を知ってしまった。それは権力者からしたら不都合だろうから。
そして彼女は俺の意図を察し、その地位を勇者と共に捨てると言った。
これには爺さんも便乗した。ローナとバズも賛同してくれた。
彼等もこの旅で思う事が有ったのだろう。
その後、俺達は帰還し、アリシアとローナは皆の前で勇者とゼルガの死を伝えた。そしてアリシアは聖女の位を返上した。
そしてローナは怪我を理由に騎士を引退した。
バズは冒険者ギルドのマスターになった。
ゼルガはどっかに隠居した。
そして俺はアリシアに護衛として雇われた。
「契約成立です♪期限は無期限ですからね?」
そして俺達の第二の人生が始まった。
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